大震災から5年経ちました。私なりにいくつかのことをしてきましたが、大したことも出来ていません。もっと真剣に考えないといけない。忘れずに、取り組んでいきたいと思います。

さて、キング・オブ・ウォールストリートと呼ばれた米投資銀行ソロモン・ブラザーズを、主に1980年代に一気にその地位にまで育てた、当時のソロモン会長ジョン・グッドフレンドが9日に86歳で亡くなったとのこと。グッドフレンドは、コンピューターを多用するモーゲージ債や裁定取引をウォールストリートに導入し、資本を使って大きなリスクを取るトレーディング型のビジネスモデルをウォールストリートに定着させた立役者と云われています。1987年に私がソロモンに入社した時には、既にこれらのビジネスモデルやソロモンの地位は確立していたので、実際に誰がどのようにイノベーションを起こし貢献したのかは、はっきりは分かりませんが、新入社員から見てもグッドフレンドの威圧感は格段に大きいものでした。

当時ソロモンは、マンハッタン島の最南端にあるビルに入っていたのですが、その41階が、ウォールストリートで、いや世界で有名なソロモンの債券部のトレーディングフロアでした。42階はなく、2階分吹き抜けになっている大きな空間は、荒々しさと知恵が併存し、常に何か大きなことが起きている、世界のマーケットの縮図であり、世界の金融機関のトップに君臨する、エキサイティングな空間でした。その喧噪のど真ん中に、仕切るものも何もなくグッドフレンドの机がデンと置いてあり、彼はいつも葉巻をくゆらしながら足を組んで横向きに座り、ニヤニヤしながら電話をしていました。その存在感は強烈でした。グッドフレンドの前に、彼に背中を見せる形でトム・ストラウス社長の席があり、その左右と前方に、大きなトレーディングフロアが拡がっていました。私はこの空間で約1年間研修を受けました。

ジョン・グッドフレンド、ヘンリー・カウフマン、ポール・モーザー、そしてジョン・メリウェザー。そういった、ウォールストリートの伝説上のような人たちと同じ時と空間を共有し、学んだり、一緒に仕事出来たことを、私はとっても有り難く思っています。私の青春を賭けた場所であり、私の社会人人生の礎を作った場所でした。グッドバイ・ジョン。