豪準備銀行(RBA)は昨日(6日)、定例の理事会において政策金利を0.25%引き下げ、史上最低の2.50%とすることを決めました。これに先立って豪ラッド政権は8月2日、2013年度の実質GDP成長率予想を2.75%(5月に3.00%から下方修正)から2.50%に再び下方修正していたことから、市場では今回の利下げを相当程度織り込んでいました。そのため、利下げ発表後の市場は一時的にも豪ドル買いで反応しました(一時、豪ドル/円は88.57まで上昇しました)が、豪経済の減速感が強まるなか、今後も追加利下げが実施される可能性は否定できず、結局のところ豪ドル/円は利下げ発表前に位置していた87.50円近辺まで下押すこととなりました。

下図にみるように、豪ドル/円は6月初旬から7月下旬にかけて概ね93円―89円のレンジ内で価格推移していました。ところが7月30日、31日の下げで、レンジ下限であり6月13日安値にも近い89円前後の水準を明確に下抜け、この時点で一目均衡表(日足)の「遅行線」が日々線を下抜ける弱気シグナルが灯ることとなりました。それ以前に豪ドル/円は重要な21日線を明確に下抜けており、その21日線は下向き(=弱気)で推移しています。結果、足下で豪ドル/円は93円-89円あたりにあったレンジを一段切り利下げ、今後しばらくは89円-85円台前半あたりのレンジ内で推移するようになる可能性が高いものと見られます。

振り返ってみますと、豪ドル/円の93円処というのは今年の1月中旬から2月下旬にかけて幾度も下値を支えた重要な節目と見ることができます。また、89円処というのは昨年10月安値から今年4月高値までの上げに対する61.8%押しの水準に近く、昨年12月の中旬から下旬にかけて幾度か上値を押さえた、これまた重要な節目です。だからこそ、しばらくは前述した93円―89円のレンジが形成されていたわけですが、このレンジが一段切り下がるとなると、今度は昨年の11月下旬から12月初旬にかけて幾度も下値を支えた85円台前半の水準が意識されやすくなってくるものと思われます。その結果として、当面は89円―85円台前半のレンジが形成されるものと考えられるのです。

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今しばらく、豪ドル/円が新たなレンジの下限に向けて一段の下値を試す展開になるとすれば、やはりドル/円もそうした動きに連れて、しばらくは一定の下値を試す展開となる可能性が高いでしょう。ここで本欄の前回(7月31日)更新分をあらためて見ていただきますと、そこでは「ドル/円が一目均衡表(日足)の『雲』下限を明確に下抜けてきた場合、それは同時に「遅行線」が日々線を下抜けることを意味し、そうなると『三役逆転』の弱気シグナルが再点灯することとなる」との指摘があります。そして、実際に足下のドル/円には明らかな弱気シグナルが灯っています。

すでに執筆時のドル/円は一時的にも97円割れ寸前の水準まで値を下げてきており、今後は前回更新分でも述べたとおり、まずは6月13日安値から7月8日高値までの上げに対する61.8%押し=96.74円、76.4%押し=95.62円などが意識されやすくなるものと思われます。いよいよ「第4波(=修正波)」は仕上げの段階に入っているものと思われますが、ここからのもうひと押しには少々警戒を要するものと心得ておきたいものです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役