ここ数日のマーケットの動きは、まさにトレーディングの難しさや楽しさ、トレーディングが何たるものかを、色々な形で見せた相場だったと思います。いや、まだ過去形ではありません。これからも暫くは、様々なことを私たちに見せるでしょう。見えたことは一杯あって、簡単には斟酌出来ないし、言い尽くすことも出来ませんが、昨日のニューヨークの株式市場のオープニングは、最近のトレーディング・投資事情を良く表していると思います。
ダウ平均株価はオープニング直後に急落し、1000ドルを超す売られ方をし、そこから一気に800ドルほど戻しました。恐らく、各トレーディングデスクやファンドに於いて、「何%以上売られたら一旦はポジションを切らなければいけない」とか、「リスク量(VaR=Value at Risk など)が或る一定量を超えたらポジションを決められたリスク量まで下げなければいけない」などのルールがあり、マーケットの振れ幅が大きくなった結果計算に使うボラティリティが上がってリスク量が増え、一旦大量にポジションの整理、即ち売りが行われたのでしょう。この場面では、各トレーダーの相場観は関係ありません。一旦リスク量が下がれば、トレーダーは各々の相場観で動ける。そして売られ過ぎだから買って、一気に大きく値を戻した。そう云ったことが起きたのでしょう。
トレーディングに於いては、特に現代に於いては、様々な要請からリスク管理が強くなって来ているので、こう云った値動きになるのでしょう。或いはまた、ここに書いたような連想が、その他のトレーダーの動きを誘引し、連想通りの値動きになるのでしょう。更に加えて、リーマンショック以降の様々な規制の中で、従来に比べて多様で資本力のあるトレーディングデスクやファンドが減ってしまったので、要はマーケットの中で自由にリスクを取れるプレイヤーが減ってしまったので、マーケットが薄くて一方向になりがちとなり、ボラティリティを高くしていると思います。正確に云うと、何かコトが起きた時のボラティリティを高くしていると思います。ダウ平均のようなアメリカの大型株でも昨晩のような激しい動きが起きたり、或いはドル円と云う、恐らく世界一二を争う流動性のものでも一気に4円程度動いてしまうなんてことは、1月2日じゃあるまいし、普通の日では従来考えられませんでした。
各トレーダーに於いては、このような環境の中に現代のマーケットがあることを認識すべきであり、一方世界の金融当局者は、規制し過ぎて、結果このように薄くてボラティリティが急に高くなる、或る意味で後退してしまったマーケットの造り直しを、考えていくべきではないでしょうか?中国のマーケットを、その管理しようとし過ぎて余計に売られてしまったりするのを揶揄する傾向もありますが、もって他山の石とすべし、資本市場先進国も、この状況をもっと正面に捉えて考えるべきだと思います。