今、市場の最大の関心事は「果たしてドル/円は100円の大台に乗せるのか?」といった点にあることと思います。実際、4月11日には99.95円、22日には99.88円の高値をつけ、あと一歩というところに迫りました。本日(24日)も朝方に99.76円までの上昇を見ていますが、市場の一部には「2度あることは3度...」などと少々諦めのムードもないではないようです。

しかし、なかにはドル/円の上値を押さえる一因となっている「通貨オプションに絡む円買い」が週内に期限を迎えることや、今週26日開催の日銀金融政策決定会合後に公表される「展望レポート」の内容が円安に弾みをつける可能性があることから、100円の大台挑戦は「3度目の正直」などと見る向きもあります。

確かに、ドル/円が非常に大きな節目である100円を超えるという"歴史的瞬間"には誰もが関心を持っていることでしょう。ただ、投資家の立場からすれば「100円を超えたとして、それでどれだけの成果が期待できるのか?」ということも重要であり、仮に多くを望めないのだとすれば、反落リスクを背負ってまでここから買い上がることは躊躇われるというのも正直なところではないかと思います。

ドル/円の上方に控える幾つかの節目については、本欄の4月10日更新分でも詳しく触れました。以下は、その概要です。 ●07年6月高値から11年10月安値までの下げに対する50%戻し=99.75円はすでにクリアしており、そろそろ一旦調整入りしてもおかしくはない。 ●月足ベースの一目均衡表における「雲」の上限(現在は100.45円に位置)が迫っており、一旦100円台に乗せたとしても上値は限られる。 ●4月の月足ロウソクも陽線となれば7カ月連続ということになり、同様の事例は00年09月から01年3月の7カ月連続に遡るが、当時も8カ月目は陰線となった。 ●09年4月高値=101.45円、05年1月安値=101.65円、99年11月安値=101.22円など、101円台には歴史的に重要な節目が複数ある。

そして、さらに今回はドル/円の価格推移において非常に重要な役割を果たしてきた「31ヶ月移動平均線(31ヶ月線)」と「31ヶ月とのかい離率」を下図に加えています。

20130424_Tajima_mini.jpg

見れば一目でわかるのは、現在のドル/円相場が31ヶ月線のはるか上方に位置し、足下の「かい離率」が21.3%と、かつてないほど高い水準に達していることです。02年2月に135円台まで急激な円安が進んだ当時でも、31ヶ月線との「かい離率」は18%程度に留まりました。このようにみると、現在のドル/円相場の過熱ぶりは記録的なものであり、それは安倍政権下において「異次元」とも言える政策が推し進められているのだから当然とも言えますが、やはり投資家にはそろそろ慎重な対応と厳格なリスク管理が求められるところと言えるでしょう。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役