7月13日、中国の国家統計局から4-6月期の実質国内総生産(GDP)が発表される見通しとなっており、既に市場の関心は大いに高まっています。

周知の通り、中国の実質国内総生産(GDP)1-3月期は前年同月比8.1%増と5四半期連続で伸びが鈍化したわけですが、続く4-6月期は一段と伸びが鈍り、市場では3年ぶりに8%を割り込むとの見方が支配的です。大方、事前に予想はしているものの、実際に発表された数値が7%台ということになると、さすがに市場は一時的にも動揺するでしょう。

具体的には、中国経済との関係が深い豪ドルなどの資源国通貨が全般に売られやすくなり、同時に市場のムードがリスク・オフへと傾きやすくなることからユーロが売られ、ドルと円が買われやすくなる可能性があります。

もちろん、中国の景気鈍化に対する市場の懸念は今に始まったことではなく、中国の政府・当局もテコ入れを図る必要性は十分に感じているものと見られます。その証拠に、中国人民銀行は去る7月5日、6月に続いて追加的な利下げに踏み切るとともに、個々の銀行が自由に決められる貸出金利の下限を「基準金利の0.7倍」に引き下げることを決めました。

これは、6月に実施した利下げの際に、それまで「0.9倍」だった貸出金利の下限を「0.8倍」にまで引き下げたことに続いての措置であり、より市中の金利が下がりやすくなる(=安定的な成長を促すよう)に配慮したものと言っていいでしょう。もっと言えば、中国政府は4-6月期の実質GDPが低い伸びに留まることを事前に把握しているからこそ、2カ月連続の利下げ措置に踏み切ったと考えることもできそうです。

ときに、中国国家統計局は今週9日、6 月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で2.2%上昇したと発表しました。これは事前の市場予想(2.5%)を下回り、2010年1 月以来、2年5か月ぶりの低い伸びということになります。

それだけ、足下で消費の伸びが鈍っており、あらためて景気の減速傾向が明らかになってきているということなのですが、同時にCPIの上昇率が低水準に留まっているということは、それだけ追加的な利下げ措置が講じやすい状況にあると言えることも、やはり見逃すことはできません。

中国政府が今年の抑制目標として掲げるCPIは4%前後とされており、目下の水準はそれを大きく下回ります。つまり、それだけ追加的な利下げの「のりしろ」が十分にあるということを示していると考えることもできます。

中国政府=中国共産党は、今秋に5年に1度の党大会を控え、これまで党内の勢力争いを露骨なまでに繰り広げてきました。その結果、しばらくの間、景気のテコ入れや金融政策が後手に回っていたとの感は拭えないわけですが、そんな勢力争いもここにきてようやく落ち着いてきたものと見られます。

党大会を間近に控え、ここから中国政府が景気のテコ入れに本腰を入れてくる...。そんな期待が徐々に高まりつつあることも事実で、場合によっては4-6月期が中国景気の底となる可能性も十分にあるものと見られます。そうであるとするならば、中国景気の先行きに対する悲観がピークに達する時こそ、豪ドルなどの資源国通貨を比較的安い水準で買い拾う好機ということになるのではないでしょうか。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役