市場では今、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場している通貨先物取引の建て玉明細において、大口投機家による「ユーロの売り越し」が過去最高水準にまで膨れ上がったことが話題となっています。

俗に「シカゴ筋」と呼ばれる大口投機家(非商業部門)によるポジショニングについては、本欄の2011年12月21日更新分でも触れており、当時も「ユーロ導入以来の過去最高を更新した」ことが話題となっていました。その後、ユーロの売り越しは一段と膨れ上がり、2012年1月24日時点で17.1万枚のピークを迎え、後に一旦は売り越しが縮小に向かいました。そのことと呼応するように、ユーロ/ドルとユーロ/円はともに2012年1月16日に一旦安値を付け、しばらくは戻り歩調を辿っています。

下の表に見るように、シカゴ筋によるユーロの売り越しは、直近の5月22日時点で19.5枚と、前週(15日)時点に比べて2.1万枚も増加しました。もちろん、これほどまでに売りポジションが積み上がるのは「尋常ではないこと」と言えます。ここで「常識的に」考えるならば、そろそろ買い戻しの動きが見られてもおかしくはないということになります。

もちろん、今は「尋常ではない」わけですから、更に一段と売り越しが増える可能性もないとは言えません。だからと言って、私たち個人投資家は「尋常ではない」方向にあえて賭ける=ここから更に新規でユーロを売り建てることには、つとめて慎重であらねばならないものと考えます。

一方、上の表からはシカゴ筋の円売り越しが、ここにきて急激に減少していることも見て取ることができます。つまり、それだけ円の買い戻し圧力が弱まってきていることを示しており、そろそろ徐々にドル/円、クロス円の価格調整にも歯止めがかかるのではないかといった予見が一定の有効性を帯びることともなるわけです。

クロス円ということで言えば、次にシカゴ筋による豪ドルの買い越しが前週(15日)時点までに急激な減少となり、ついに5月22日時点では1.6万枚超の売り越しに転じたという事実が目にとまります。言うまでもなく、それだけ売り戻し圧力が急激に弱まっており、豪ドル相場の価格調整にも一定の歯止めがかかるのではないかといった予見が有効性を高めることともなるわけです。

ちなみに、ここでドル/円が底入れ・反発すれば、その動きに連れて豪ドル/円が底入れ・反発することもあり得ますし、逆に豪ドル/円が底入れ・反発すれば、その動きに連れてドル/円が底入れ・反発することもあり得ます。

こうしたシカゴ筋の需給動向からすれば、ドル/円、クロス円がトレンド転換を迎えるタイミングはそう遠くないということになりそうです。少なくとも、ドル/円、クロス円が直近の安値から大きく下押すという可能性は、徐々に低下していると考えることができるのではないでしょうか。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役