「ギリシャが債務不履行になり、金融が混乱するリスクは残っている」と、日本政策投資銀行の橋本徹社長が語っている(2012年1月31日付 日本経済新聞)とおり、いまだギリシャの債務減免交渉は決着を見ておらず、米ウォールストリート・ジャーナル紙は「ユーロ圏各国がギリシャへの新たな救済資金供給を拒否する可能性がある」との認識を示しています。そして、足下ではポルトガルの10年債利回りがユーロ導入以来初めて17%台に乗せたり、イタリアの国債入札が不調に終わるケースが生じるなど、あらためてユーロベアな材料が次々に飛び出している有様です。

とはいえ、ユーロ/ドルが1月16日安値の1.2621ドルで一旦は下げ止まり、その後、1月27日に1.3232ドルまでの戻りを見たことも事実。果たして、市場はユーロ/ドルに一段の戻り余地があると見ているのでしょうか、それともすでに戻りは一巡したと見ているのでしょうか。

まず言えることは、本欄の2012年1月11日更新分で述べたとおり、ユーロ/ドルの1.2600ドル近辺というのは、2010年6月安値から2011年5月高値までの上げ幅に対する「76.4%押し」という重要な節目にあたることと、2010年8月安値にも近いことから、同水準では一旦下げ渋る可能性が高かったということです。

そして案の定、ユーロ/ドルは前述した通り、1.2621ドルで一旦下げ止まり、これまでに1.3232ドルまでの戻りを見るに至りました。(以下の図をご覧ください。)

(図をクリックいただくとファイルをダウンロードしていただけます。)
しかし、1.3200ドル台に乗せてからは戻りの勢いが失われ、昨日(1月31日)の欧米時間には一時1.3050ドルを下回る場面も垣間見られています。

これは、ひとつにユーロ/ドルが1.3200ドル台に乗せたところで、一目均衡表の日足「雲」下限に到達し、この「雲」下限が上値抵抗として意識されやすくなっていることが一因と思われます。

加えて、2011年10月27日高値から2012年1月16日安値までの下げ幅に対する「38.2%戻し」の水準が1.3244ドルに位置しており、これもユーロ/ドルの戻りに一定の目標到達感を覚えるところとなっている模様です。

さらに、直近高値=1.3232ドルの上方には、2010年8月以降に形成されていたと考えられるヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)の「ネックライン」が控えており、これも戻りの限界を感じさせるに十分なインパクトとなっています。

これだけ数々の重要な節目がユーロ/ドルの上値を押さえている以上、もはや[当面の戻りは一巡した]と考えるのが普通でしょう。ただ、ここで安易に戻り売りを仕掛けられないのは、本欄の2011年12月21日更新分で触れた「シカゴ筋」によるユーロ売り越し枚数が1月24日時点で17.1万枚と、なおも過去最高を更新していることによります。ここまで売り越し枚数が積み上がってくると、きっかけ一つで一気に買い戻しの圧力が強まる可能性もあり、ここは些か慎重な取り組みが求められるところです。

1月31日時点でのシカゴ筋によるユーロ売り越し状況は、この週末(2月6日)の米国時間に明らかにされます。まずは、その結果を確認することが重要です。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役