昨日(1月24日)から2日間に渡り、米国では連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されています。今年初となるFOMCには、いつも以上に強い市場の関心が寄せられており、ことに近い将来において実施の決定がなされる可能性のある「量的緩和第3弾(QE3)の布石となるような話し合いが行われるかどうか」が焦点とされています。
その意味も含め、今回のFOMCで非常に注目度の高い点が大きく2つあります。
ひとつは、今回初の試みとしてFOMC終了時にメンバー全員による将来の政策金利見通しとその理由が公表される予定となっていることです。すでに市場では「事実上のゼロ金が一段と長期化するとの見方を確認する可能性が強まる」と見ており、そのことがQE3の「呼び水」となるかどうかに関心が集まっている模様です。
もうひとつは、今回からFOMCの投票権を持つメンバーの顔触れが入れ替わり、その結果、全体としてFOMCが以前よりも「ハト派色」を強めていくのではないかと、市場が見ているという点です。ちなみに、ハト派というのは、どちらかというと景気の先行きに慎重な見方をしており、緩和的な金融政策の方に軸足を置きがちな存在です。それが一体どういうことを意味するのか、この機会に「そもそもFOMCのメンバー構成はどうなっているのか」という点について、あらためて触れておきたいと思います。
まず、FOMCのメンバーというのは、米連邦準備制度理事会(FRB)のメンバー7人と、全米に12ある連邦準備銀行(地区連銀)の総裁5人で構成されています。この地区連銀総裁のうち、ニューヨーク連銀総裁はFOMCの常任副議長に据えられることとなっており、残り11人の地区連銀総裁のうち4人が毎年交代でFOMCの投票権を持つという仕組みです。ちなみに、FRBは大統領が指名し、上院が承認した7人の理事によって構成されており(欠員が生じる場合もままあります)、承認を得た理事のなかから大統領の任命と上院の承認によってFRB議長、FRB副議長が選出されます。なお、2012年のFOMCメンバーは以下の通りです。
前述したように、地区連銀総裁の4人は毎年交代です。そこで注目されているのが、昨年までのメンバーのうち「タカ派(景気見通しに楽観的で、比較的強気な政策に軸足を置く存在)」とされたフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とダラス連銀のフィッシャー総裁が自動的にメンバーから外れたという点です。
2012年のメンバーにはハト派、中立派が多いとされ、タカ派と見られるのはリッチモンド連銀のラッカ―総裁のみ。また、すでに大統領から指名を受け、近く上院で承認される見込みのパウエル氏とスタイン氏は、市場がハト派と見るバーナンキ議長の政策判断を揺るがすようなことはないだろうとの評が大勢です。
アトランタ連銀のロックハート総裁は資産購入=追加緩和に対して否定的とされていますが、全体の比重からして多数決においてはハト派優勢のメンバー構成ということが言えそうで、すでに多くの市場関係者は「2012年前半にQE3の実施が決定される可能性が高い」と見ている模様です。
コラム執筆:
田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役