これまで本欄では幾度か移動平均線を用いた相場分析の手法をご紹介してきました。そこで用いたのは、基本的に「単純移動平均線(SMA)」でしたが、専門家や投資家のなかには、直近の価格ほど大きくウェートづける累積加重平均の手法を用いた「指数平滑移動平均線(EMA)」を重視する向きが少なくないのも事実です。

このEMAの活用法として、よりポピュラーなものに「MACD」があります。一般には「マックディー」などと呼ばれ、日本語では「移動平均収束発散法」と呼ばれたりもします。なにやら呼び名は難しそうですが、実際に使ってみると視覚的にわかりやすいことから愛好者が多く、ネット経由で入手できるテクニカルチャートにも、多くの場合、このMACDを描画する機能が備わっています。

このMACDは、計算期間が異なる2種類のEMAの差であり、一般的には12日間と26日間のEMAの差が用いられます。さらに、この数値の9日間のEMAを計算したものをMACDシグナル(シグナルライン)と呼び、MACDとともにチャート上に描画されるのが一般的です。

具体的に使ううえで注目したいのは、主に【1】MACDの向きの転換、【2】MACDとシグナルラインの交差、【3】MACDとゼロラインの交差。これらを投資判断のサインとするのです。では、実際に下に示したユーロ/ドルの日足チャート(過去1年)を使って、その有効性を検証してみましょう。

図:株式会社アルフィナンツ作成

まず、チャート上【A】では下向きだったMACDが上向きに転じたことから、これを「買い」のサインと判断します。逆に、上向きだったMACDが下向きに転じたら「売り」のサインと考えるのが基本です。

チャート上【B】では、MACDがシグナルラインを下抜けたことから、これを「売り」のサインと判断します。逆に、MACDがシグナルラインを上抜けたときは、それを「買い」のサインと判断するのが基本です。

チャート上【C】では、MACDがゼロラインを上抜けたことから、これを「買い」のサインと判断します。逆に、MACDがゼロラインを下抜けたときは、それを「売り」のサインと判断するのが基本です。

他に、MACDがゼロラインより上方にある場合は基本的に強気、逆にゼロラインより下方にあるときは基本的に弱気と判断することもあります。

その意味からすると、最近のMACDはゼロラインを挟んで上下を繰り返しており、ともするとゼロラインより下方で定着してしまいそうな雰囲気であることから、ユーロ/ドル相場は弱気に傾きかけていると判断することもできそうです。

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役