前回は移動平均線の向きや順番、市場価格との位置関係などで投資判断の参考とする考え方に触れました。引き続いて今回は、より積極的に「買い」や「売り」のタイミングを捉え、好機を逃さないようにするための手法についておさらいしておきましょう。

 それは、計算期間の異なる2本の移動平均線をチャート上に描画し、互いの位置関係によって投資判断の参考とする考え方です。すでにお馴染みかもしれませんが、それは「ゴールデン・クロス」、「デッド・クロス」と呼ばれるもので、前者は「買い」、後者は「売り」のサインとして有効となるケースが過去にも多く見受けられています。早速、以下のチャートを使って、その有効性を実証してみましょう。

株式会社アルフィナンツ作成

 これは、ユーロ/ドルの日足チャート上に21日線(赤い線)と89日線(青い線)という2本の移動平均線を描画したもので、ポイントAは21日線が89日線を下から上に突き抜けた時点を示しています。このように、計算期間の短い移動平均線が計算期間の長い移動平均線を下から上に突き抜けた状態を「ゴールデン・クロス(GC)」と言い、基本的に「買い」のサインと考えます。

 ただし、ポイントAの時点では計算期間の長い方の移動平均線(89日線)が下向きになっており、これは必ずしも信頼性の高いサインとは言えません。むしろ、より確度の高い買い場と言えるのは、後に89日線が上向きに転じてきたときと考えます。その実、ポイントBの時点でもGCが現れていますが、89日線が下向きのときに現れたGCであったため、後に一旦、相場は大きく下押しています。この場合も、より確度の高い買い場は後に89日線が上向きに転じてきたときと考えます。

 次に、ポイントCを見てみると、今度は21日線が89日線を上から下に突き抜けていることがわかります。このように、計算期間の短い移動平均線が計算期間の長い移動平均線を上から下に突き抜けた状態を「デッド・クロス(DC)」と言い、基本的に「売り」のサインと考えます。

 ただし、ポイントCの時点では89日線が上向きになっており、これは必ずしも信頼性の高いサインとは言えません。むしろ、より確度の高い売り場と言えるのは、後に89日線が下向きに転じてきたときと考えます。その実、ポイントDの時点でもDCは現れていますが、89日線が上向きの時に現れたDCであったため、後に相場は底入れから反発に向かい、中期的に一段と強い基調を辿ることとなりました。

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役