これまで本欄で幾度か触れてきたトレンドというのは、言わば「相場の風向き」のようなものです。その風向きを伺い知るために、前回は「トレンドラインを引く」という手法に触れましたが、今回はそれに「移動平均線」を加えることにしましょう。

 周知の通り、株式相場の分析と投資判断によく用いられる移動平均線は、25日や75日などを計算期間とする移動平均線ですが、外国為替相場の場合は21日、89日、200日などを計算期間とする移動平均線がよく用いられます。それは、過去の価格推移に照らして、他の計算期間を用いるよりも「相性がいい」からに他なりません。

 これら移動平均線を日足チャート上に描画し、そのうえで注目したいのは、主に【1】「向き」、【2】「順番」、【3】「市場価格との位置関係」です。ここで直近6カ月のドル/円日足チャートを例に、それぞれの見方・考え方を示しておきましょう。

出所:株式会社アルフィナンツ作成

【1】の向きに関しては、このところ3種類の移動平均線がいずれも下向きであることがわかります。もちろん、これはドル/円相場に吹く風が強い下向きであるということです。

【2】の順番は、目下のところ上から200日、89日、21日となっています。
下降トレンドが強く出ている状況にあっては、計算期間の長い順番に上から移動平均線が並ぶこととなり、これをパーフェクトオーダー(=完璧な順番)と呼んだりもします。今後、仮に相場が切り返せば、当然、計算期間の短いものから順に上へと向かいます。やがては、21日線が89日線を上抜け、次に89日線が200日線を上抜ける可能性もあります。

すると、今度は計算期間の短い順番に上から移動平均線が並ぶこととなります。これも上昇トレンドが強く出たときのパーフェクトオーダーです。投資判断としては、89日線が200日線を上抜けた(=パーフェクトオーダーが完成した)時点で、それを比較的強い買いのサインと見做すことになります。

【3】の市場価格との位置関係に関しては、まずドル/円の5月高値や7月高値に注目。それら高値が、下を向いた89日線の位置する水準でことごとく上値を抑さえられていることは一目瞭然でしょう。つまり、ときに移動平均線は「上値抵抗」になったり、逆に「下値支持」になったりすることが少なくないということです。もちろん、上値抵抗と考えられていた移動平均線を市場価格が上抜ければ、それは買いのサイン。また、下値抵抗と考えられていた移動平均線を市場価格が下抜ければ、それは売りのサインと判断することが有効となるケースは多々あります。

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役