今回から、新たに本欄を担当させていただくこととなりました。これからFXを始めようと考えている方からある程度のご経験がある方まで、広く多くの皆様に向けて、外国為替相場と向き合う際の留意点や押さえておきたいポイント、成果を導くヒントなどについて書き綴って参りたいと思っています。

まず初回は、やはり相場のトレンド(基調)について触れておかねばならないでしょう。よく「トレンド・フォロー」などという言葉が使われますが、これは要するに「順張り」を基本とする投資スタイルのこと。ご承知の方も多いことと思いますが、外国為替市場に見られる各通貨ペアのトレンドというのは、他のいかなる市場よりも強く現れますし、ひとたび出たトレンドは比較的長い期間に渡って続きます。よって「多くの場合、そのトレンドに逆らうことは得策ではない」というのが、外国為替相場と向き合うときの重要な心得の一つです。

順張りの逆は、言うまでもなく「逆張り」であり、この逆張りのスタイルで臨む個人投資家の方が決して少なくないこともわかっています。しかし、これは少々リスキーなスタイルであると言わざるを得ません。

例えば、昨今のドル/円の価格推移で考えますと、大きな流れは依然として円高・ドル安のトレンドにあると言えます。ところが、ドル/円が80.00円台の前半あたりに値を下げてくると、すかさず買い拾うという方が結構少なくない...。これは、まさしく逆張りの投資スタイルということになります。

確かに、5月初旬以降の価格推移をみると、80.00円前後の水準には底堅さが感じられます。だからと言って、目下はとりたてて強いドル買いの材料が認められるわけでもなく、明らかに上昇トレンドに転換したとする根拠も見当たりません。むしろ、ともすると再び80.00円の大台を割り込んで、大きく円高・ドル安方向に振れてしまうリスクを孕んでいると言えます。

もちろん、たまたま短期で利益をモノにすることもあるでしょう。しかし、それを繰り返しているとトータルではマイナスになってしまう可能性が高い...。「中長期で見れば、いずれ円安・ドル高トレンドに転換する」という見立てには賛同しますが、ならばトレンド転換がハッキリと認められてから、新たなトレンドに「順張り」で乗る方が無難であることは間違いありません。

「FXは、いかに負けの確率を低く抑えるかが勝負」ということを、あらためて確認しておきたいものです。

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役