先週金曜日、日銀・黒田総裁が出口に触れるという"逆バズーカ"で不意打ちを受け、ドル円は105円台の円高に振れました。

もともと日銀は、目標達成まで緩和を継続するとしているのですから、「19年度に2%達成を確信している」と発言した以上、「出口を19年度頃に検討する」という今回のコメントには全く違和感はありません。

では、新体制の日銀は、実際どのように動くと考えられるのでしょうか。

経営者の判断には、純粋な損益予想だけでなく、心理的な要素が強く関係しているとする「心理会計」という考え方があります。

例えば、1期目に失敗した経営者は、その翌年には、その失敗体験と今期の成否の可能性を「統合勘定」で考える可能性が高いとされます。このため、今期に失敗を埋め合わせようと、無謀なリスクを取ったり、逆に全くリスクを取れなくなってしまいます。このため、失敗した経営者は交代させた方がベターです。

逆に、過去成功をしている場合、今期も好環境が続くと予想されている限り、過去を切り離し、今期を「分離勘定」で考えやすい傾向があります。業務に冷静に集中しやすい状態です。

では、黒田氏の場合はどうでしょうか、1期目は、株価も物価上昇率も、一定の成果を挙げたといえるでしょう。ただ、4月からの2期目は、かなり厳しい環境になると予想されます。その場合、好環境が予想されている場合とは異なり、過去の成果と今期を「統合勘定」で考える傾向が高まります。

この場合、過去の成果を守るため、どちらかというとリスクが取りにくくなると予想されます。最近の市場の金融政策への神経質な動きをみる限り、実際出口に向かうとなると、相当のリスクやコストを伴うことになりそうです。このため、心理会計的には、今のところ、出口に向かう気にはまだまだなれないのでは、と想像します。

もっとも、今回の市場の反応は、発言の現実味の問題ではなく、あらゆる売り材料を見つけているだけとも考えられます。そんな時こそ、投資戦略的には、過去の損は「分離勘定」でとらえ、今後の市場動向を冷静に判断したいものです。