日本郵政の社長人事については先日述べました。今度は作家の曾野綾子さんを社外取締役として起用することを政府は決めたとのことです。日本郵政は委員会設置会社です。委員会設置会社に於いては、社外取締役を中心に構成された指名委員会が株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の決定を行い、株主の決議を仰ぐことになります。日本郵政に於いては政府が唯一の株主ですから、政府が了承する取締役人事でなければどんなに指名委員会が頑張って人選しても、結果的にはその人事は実現できません。ですから政府の意のままの人事になることは、或る意味で当然だと思います。しかしそんなことは当初から分かっていることなので、では何故政府は日本郵政を作った時に委員会設置会社にしたのでしょうか?そもそもその部分からして、日本郵政の在り方を変えようと云うことなのでしょう。それが政府の方針であるならば、それ自体には様々な議論があり得ますが、仕方ないのかも知れません。しかしそれでは指名委員の方々が可哀想です。何故なら自ら選んだのでない名簿を株主から渡され、これを指名委員会で選任したこととして承認し、株主総会に提出してくれ、と云われる訳ですから、独立した取締役としての責任も何もあったものではありません。いや、指名委員会の方々は、その方向を既に了承しているのかも知れません。さはさりながら、唯一の株主である政府は、予め現取締役陣を解任するのでしょうか?それとも全員に辞任を勧めるのでしょうか(辞任は自ら行うもので、これは概念的にちょっと変ですが)?或いは全員に、自らが解任される議案に賛成させるのでしょうか?私は、少なくとも今日のつぶやきでは、郵政民営化の見直し自体について論じているのではありません。私が気になるのは、悪法も法であるように、政府や立法府の方々は、世間に対する模範と云う意味でも、ルールは守ると云うか、ちゃんと段取りを踏んだ方がいいと思うのです。何かこんがらがってしまいました。しかし私の論旨と同様に、本件はどこかがこんがらかっていることは事実だと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。