MBOに於ける株式の買い取り価格について、高裁が会社の決定した価格(それは地裁は適正だと決定しているのですが)を不当とし、会社が採用した基準価格よりもかなり過去の株価を基準とし、適当な買い取り価格を決定したとのニュースを読みました。正確には、会社の提示した価格は、MBO公表前日までの半年間の平均株価の約2割増しであり、高裁の決定した価格は、MBO公表の1年前の株価の約2割増しです。概念的には基準価格の設定を9ヶ月ほど遡らせたことになります。

これは高裁が、株主の利益を考えて決定したことでしょう。しかしやはり不安を感じない訳にはいきません。弁護士の方の「企業が公正な手続きで決定したMBO価格に裁判所が安易に介入するのは問題だと考える」との意見が出ているようですが、もっともな意見だと思います。そもそも株価は変動します。マーケット全体が上がる時期もあれば下がる時期もあります。或る例では長めに遡れば株主に有利な価格だったとしても、他の例ではそうなるとは決して限りません。

ここ数年の裁判所の判断に関しては、資本市場への理解度について疑問を持たざるを得ないケースがままあります。「ルールとは何か?」・・・多くの見知らぬ人が集まってきて構成される資本市場に於いては、ぶれないルールが必須です。そうでないと資本市場としての効率性が減少し、その意義を失ってしまいます。日本の資本市場をしっかりと育てていくのは大変です。私たちも精一杯のことをしていきたいと思います。