アメリカのサブプライム問題を契機に、各国で株価が下落しています。困ったものです。そしてこの現象を説明する時に、必ずと云っていいほど使われるフレーズは、「アメリカ経済の先行きに対する懸念」となります。何となく耳にすんなりと入ってくるのですが、注意が必要です。一般にこのように云われると、重要なのは「アメリカ経済の動向」の様に思われます。しかし実は最も重要なのは、最後の一言、「懸念」の部分です。
日経平均が4万円近かった時も、1万円を割った時も、日本の経済力のバロメーターであるGDPは殆ど変化がありませんでした。株価が4倍も変わった、4分の1になったにも拘わらずです。経済と株価は、実はさほど連関していないのです。企業収益と株価も、日本に於いてはあまり強く連関していません。アメリカなどでは、この収益と株価の部分はもっと連動するのですが、いずれにしろ、経済と株価は、先進国に於いてはどこでも、殆ど連関しないものです。
それでは何が株価を動かすかと云うと、所謂「センチメント」です。株価は、企業の時価総額を株数で割ったものですが、時価総額は、企業の年間純利益のX年倍と云う形で表せます。このXをPER、マルチプルと呼びますが、主にこのマルチプルの上下によって、株価は変動する訳です。そしてこのマルチプルを変動させるのがセンチメント(感情)、或いはコンフィデンス(自信、もしくは信頼)です。不安になるから、マルチプルが下がり、株価が下がるのです。ですから株価が上昇するきっかけも、「不安感の払拭」になります。実際の経済の行方よりも、この心理的な部分の行方に、しっかりと注意していきたいですね。