ベネチアに行きたい!と云ってもイタリアのベニスではありません。マカオに出来た巨大カジノ、ベネチアン・マカオ・リゾートのことです。マカオにアメリカ資本のカジノが進出してから、マカオのカジノ・ビジネスは年々大きくなってきました。ことカジノに関しては、アメリカ資本が最もコツを心得ているようで、顧客満足、成長性、利益性、どれを取ってもダントツです。
そして昨年末には、遂にマカオのカジノ収入はラスベガスを抜き、世界最大となりました。そのマカオに、超弩級のカジノが今日オープンしたのです。これは気になります。アメリカン・カジノの特徴は、砂漠のど真ん中や小さな島の中に、カジノ・ホテル・遊園地・劇場・高級ショッピングモールなどの複合施設を造ることによって、本人とその連れを閉鎖系に隔離し、系全体として、顧客に勝ち逃げをさせない仕組みにあります。ロンドンのカジノは街なかにあるので、勝つと即勝ち逃げして飲みに行くことが出来ます。隔離・閉鎖系カジノでは、移動が面倒で、予め決めた日程の間は賭け続けてしまうので、勝ち逃げが難しくなり、結果として本来計算された確率に勝敗が収斂されて来ますから、当然カジノ側が勝つことになります。或いは自分は儲けても、その一部もしくは全部を連れに消費させる仕組みがあります。とにかく良く出来たビジネス・モデルです。
マカオ然り。島であることからして、完全なアリ地獄を形成していることが火を見るより明らかです。ましてアジア最大級の超大型カジノ・ベネチアン。ここに行くのは、飛んで火にいる夏の虫のようなものです。しかしそれでもやはり気になります。確か阿佐田哲也の新麻雀放浪記のエンディングは、人生最後の大博打に勝った主人公が、現ナマを詰めた大カバンを持ってマカオを脱出する場面です。この話にはどんでん返しがあるのですが、カジノでの最大のエキサイトメントは、額の如何に関わらず、隔離・閉鎖系からの「勝ち逃げ」を完了した瞬間です。その一瞬のために、わざわざ蟻地獄に足を突っ込みに行くようなものです。まぁ実際にはとてもマカオに行く時間はありませんが、いつか訪れる日を夢見ていたいと思います。