下町に、かなりイケる寿司屋があると聞きました。最初は我が愛する寿司を復活させた寿司職人・Yさんに、中々美味しいらしいと聞き、一度は覗いてみなければと思いました。不思議なものでその途端、この寿司屋の評判が聞こえてきたり、目に入るようになりました。偶々買った雑誌の中に発見すると、店の若き主人・Sさんの顔構えがいい。寿司自体の見映えだけでなく、店の様子や、特に職人さんの雰囲気は、「美味しそうか否か」を決める上で、私にとってはとても重要なファクターです。取材で会ったフードライターCさんや編集の人も、その店の噂を聞いたと云います。

むぅ。こうなると私の頭の中では、ムクムクとこの寿司屋のイメージが自然増殖を始め、もう居ても立ってもいられなくなってしまいました。「これはもしかしたら、私の愛するYさんの寿司を超える寿司かも知れない。
いや、そうに違いない。今や東京中の寿司好きの中で、未だ食べていないのは自分だけではないのか。これで寿司好きと云えるか!ブツブツ・・・」もう手が付けられません。

そこで昨晩、早速突撃してみました。普段はお好みで、全て自分でネタを順番に指定しますが、敢えて「お任せ」で頼んでみました。そして雑誌で見た顔のSさんに、「Yさんの寿司を食べているのですが、今日はYさんに聞き、浮気しに来ました」と伝えました。Sさん、何かを感じた模様。一通りおつまみが自動的に出てきた後に、いよいよ握りが始まりました。先ずはコハダから。目の前に寿司が置かれ、私がすかさずそれを口に運ぶと、Sさんは子供のように好奇心に満ちたいたずらっぽい表情で、私の顔を覗き込みました。次は、かすご。Sさんはまた同じ表情で私の顔を覗き込みます。

そんなやりとりが何度も続きました。中々味のある応酬です。あー、やっぱり寿司っていいですねぇ〜。これだから寿司探検はやめられません。えっ、どのくらい美味しかったですかって?それは内緒です。でもようやく私の心は落ち着いたのでした。