新入社員向けの訓辞の中で、「あなた方がビジネスプランである」とも言いました。これはやはりかつて私が外資系証券会社に働いている時に聞いた言葉で、尊敬する上司MDのセリフです。MDはアイリッシュ・アメリカンで、仁義に厚い男で、信望がとてもありました。MDは東京の責任者を務めていたのですが、或る時NYの大ボスに対して強烈に反対意見を言い、或る意味で悪態をついてしまい、潔いMDはそれを機に引退を決意しました。

MDが引退し東京を去る正にその日、オフィスの隣のホテルの一室ではMDの後継者(GW)と、私を含めた幹部社員数人で、次年度のビジネスプランを議論するミーティングが開かれていました。すると突然、MDが部屋に入ってきました。曰く、「俺は今日去るが渡したいビジネスプランがある」。後継者GWは当惑しました。当然でしょう。GWが止めるもの聞かず、MDは部屋を一周し、脇に抱えていた新品のレポート用紙を一冊ずつ私たちに投げるように配りました。そしてMDは目を潤ませながら言いました。「何も書いていないようだが、これが俺のビジネスプランだ。お前達がここにビジネスプランを書いていく。お前達が俺のビジネスプランそのものなのだ。」私も流石に目頭が熱くなりました。

或る意味で古き佳き時代です。しかし組織はそうあるべきだと思います。トップも社員も、この考え方を共有できる会社になりたいと思っています。