ダボスに着いてまだ一日も経っていませんが、雰囲気が昨年とは随分違うことを感じます。まぁ昨年はイラク開戦の直前だったせいもありますが、あの頃の悪い意味での緊張感が大幅に後退しています。いわゆる地政学的リスクは、世界的にかなり下がっているのでしょう。
顔だけを見ても、去年はかなり減っていたイスラム系の人の参加が回復してきているように見えます。経済についても、欧・米共に、基本的に見通しは明るそうです。「景気はどう?」と誰に聞いても、暫くは良くなりそうだね、という答えが返ってきます。日本についても、「回復してきてるの?」と聞かれるのですが、疑っているとか、本当に聞いているのではなくて、私が彼らに聞く時と同様、分かっているのだけど確認したい、という感じです。世界的な景気循環が、地政学的リスクの減少を伴いながら、上向いているのでしょう。楽観は必ずしも悪いことではありません。この楽観の中で暫くの間−2、3年間でしょうか−経済と市場は育ち、いずれ慢心から綻びが起き始め、世界は再度下向きの波に入るのでしょうか。もっと多くの若い人が、もっと大勢の「欧・米」外の人がこのような会議に参加して、歴史の波を実体験して、その結果同じ過ちを何回も繰り返すことが減ればいいのにと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。