本日発表の10月の消費者物価指数は5年6ヶ月ぶりに前年同月比でプラスに転じました(0.1%上昇)。(11月の都区部消費者物価は未だマイナス(前年同月比0.2%下落)でしたが、こちらもそろそろプラスに転じそうです。)
今日は足利銀行の問題があったので、マーケットはそれどころではなかったようですが、このニュースには注目した方がいいと思います。世の中はデフレですから、消費者物価指数は下がり続けています。しかしこの下落のスピードが、3年ほど前から鈍くなってきました。そして遂に、物価の下落が止まろうとしています。「y=xの二乗−a」というグラフをイメージしてみて下さい。物価の推移は、そのグラフの左半分のようになります。ずぅっと下がってきたものが、下がり方が鈍くなってきて、今の瞬間では水平になっている、そんな状態です。
竹中大臣は、「全体で見ると緩やかなデフレが進行している状況である」とコメントしたようですが、グラフの微分は、3年前に最悪のマイナス1.5%を付けてから着実に戻ってきて、今は既にほぼゼロなのです。デフレが終わると言うのは時期尚早ですが、デフレからインフレに変わる時の、資産運用のリスクの形の変化は巨大です。「もしインフレが始まったらどうするか」ということをそろそろ考え始めてもいい時期だと思います。デフレは緩やかに進行するものですが、インフレはひとたび始まると急速に進行することも覚えておくべきです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。