以前に、日本は生産性と品質を兼ね備えた希有な国ではないかと書いたことがあります。では日本の高品質とは何かというと、決して車やカメラ・エレキだけではないと思います。何百年という伝統のある色々な日本文化も、やはり日本の品質を表象するものだと思います。しかしそれらの中で、最も質・量、共に大きな高品質は食べ物ではないかと思っています。
これは何も高級懐石のことを言っているのではありません。私の好きな鮨のことでもありません。何処でも普通に食べている食事が、その一般的な水準と規模に於いて、世界に類を見ない、或いは有数の、高品質ではないかと思うのです。何種類もの食材を使った、何種類もの惣菜が、普通のことのように食卓に並べられる。それらを味わい分ける、それらを求める味覚や、それらを維持し続ける生活に、極めて高い文化を私は感じます。日本が世界に貢献出来ることの中には、このように私達が一般にあまり自覚していない部分にも、まだまだあるように思われます。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。