去年ノーベル賞をとったダニエル・カーネマンの行動経済学によると、人は損をしている領域では変化を好み、一方得をしている領域では安定を好むと言います。このような行動心理は、各人の利食い・損切りの問題だけでなく、マーケット全体にも影響を与えると思われます。一般に、株価が低迷している時には「ノイズ」は好材料として受け止められ、株価が伸びている時には「ノイズ」は不安材料として株価に悪影響を与えることが多いものです。
今日の中曽根氏の行動は、残念ながら悪いノイズとしてマーケットには受け止められたのではないでしょうか。小泉内閣はこの半年間ほど、マーケットとの対話を随分改善してきたと思います。今のマーケットは、その共有のプラットフォームを大切にしている気がします。政権の善し悪しとは関係なく、株式市場の観点から見ると、小泉政権へのノイズは動揺の原因となるでしょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。