G7から1ヶ月が経ち、円ドル・レートは8円ほど動きました。その間、日経平均は300円ほど上昇し、アメリカのダウ平均も200ドルほど上昇しました。比率で言うと、対ドルで7%ほど円高になり、日本株とアメリカ株はそれぞれ3%、2%ほど上昇したことになります。
円高で悪影響を受ける企業の構造改革や淘汰は既に終わっており、当初懸念されたほど日本経済には悪影響はなく、むしろ内需関連ではいい影響があると認識されたのでしょう。一方、アメリカ企業にとっては穏やかなドル安は順風で、大統領選を控える政権にとってもありがたい風だったことでしょう。加えて今回の為替の動きは、全ての通貨に対してドルが安くなったので、日米以外の他国に於いては強い自国通貨を背景に、ようやく回復の兆しの出てきた各国経済を刺激する為の金利政策(金利を引き下げる)に政策余地を与えることにもなったでしょうから、こう見る限り、全ての国にとって都合のいい動きだったと言えると思います。ここまで見通して行われたことなのか、偶然の産物なのかは分かりませんが、円ドル・レートは新たな居心地のいい場所を見つけたように見えます。為替は一般に国際政治の最たるものでゼロ・サム・ゲームのように考えられますが、今の国際社会の中で、トータル・サムが増える絶妙の動きだったのかも知れません。このようないいことが、これからも続くといいですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。