一般にビジネスは相手、即ちお客さんが満足するか否かが重要ですから、『受け手の価値観』が軸となるのに対し、アートは創り手の価値観で作品が創られ、或る意味で一方的に提示され、場合によっては何年も経ってから認められることもあり、そういう意味で『出し手の価値観』が軸となるものだと思っています。
そう考えると料理はビジネスでしょうか、アートでしょうか?通常、料理人は、食べる人を予め見たりしません。相手を見ないから、即相手の価値観を軸としていないとは言えませんが、味覚は体調にも大きく左右されるものですから、その人を見ないで創られる料理は、どちらかと言うと料理人の価値観によって創られ、食べ手に提供されているような気がします。洋食の類はそういうものが多いですが、蕎麦でも蕎麦屋は勝手に打って、勝手に出してきます。そんな中で、鮨は別です。鮨は、握り手が食べ手の顔色を見ながら、種類、順番、味付け、大きさを変えることが出来ます。蕎麦と鮨を比べると、蕎麦屋が家内制手工業、鮨屋は職人芸のように感じますが、実は蕎麦の方がよりアートで、鮨の方がよりビジネスということでしょうか。やはり一番いいのは鮨屋のお客さんですね。