多様性は、複数の権力の牽制を実現し民主的なプロセスを担保するためにも、また非連続な変化を促しその結果として社会全体の成長を図るためにも、極めて重要な価値だと思います。我が国の抱える最大の問題はまさにこの多様性が無いということではないでしょうか。他人と同じであることを良しとし、リスクを取ることを避け、一方では学歴社会に見られるような単一の評価基準で競争を強いる教育。中世の時代から、人々に情報を与えてその時点の体制の矛盾点を曝して、常に次世代へのムーヴメントを起こす重要な前提・武器・触媒であったのは「メディア」だと思うのですが、そのメディアが一方で記者クラブ発の画一的な情報を流し、一方で写真週刊誌などでプライバシーを守らず、民衆のための武器としての役割を果たしていないように見える状態。この教育とメディアの問題が、我が国の多様性の無さの根源ではないでしょうか。こういった所から直していくことが、我が国の将来を考える上でとても重要に思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。