ドルが安い。今までは有事といえば「ドル買い」でしたが、今回はイラクとの戦争が近付く中でドルが安く推移しています。ドル安の原因は有事ではなく、アメリカの経済情勢から来ているのかも知れませんが、そうであれば経済が停滞している日本の円に対しても安いことが説明できません。有事に関しても、イラクや中東に地理的に遥かに近いユーロが高いことも不思議な現象です。数週間前、タイム誌のヨーロッパ版のウェブ・サイトで、世界の平和を脅かしているのは誰かというオンライン投票をしたのですが、1位はフセイン、ビン・ラディンをおさえてブッシュでした。もちろんこれはヨーロッパ人独特の皮肉がたっぷりと込められているでしょう。しかしブッシュ政権が、歴代のアメリカ政権との比較で、どこか一つ足りない何かがあることも事実でしょう。その、或る意味での信任の低さが、ドル安を招いているのではないでしょうか。何事にもつけ、クレディビリティーの重要さをまざまざと知る思いです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。