債券や株式を売買して利益を上げることを職業としているプロのトレーダーの仕事の範囲は案外広いものです。ポジションの確認をしたり、リスクを綿密に、かついろいろな角度から計ってみたり、ポジションを取るための流動性や受信枠の確認をしたり。場合によってはトレーディングのためのプログラムを自分で書いたり、或いは少なくとも仕様を指図したりまでします。勿論マーケットに関する情報を収集して売買の判断もする訳ですが、そこに至るまでの下準備に費やされる労力と時間の方が遥かに大きいと思われます。少なくともトレーディング・チームでみるとそれは明らかです。床屋さんに行くと、耳の回りや襟足の処理に大部分の時間を割いて、肝心の前髪を切るのはチョチョッと、あっという間に終わってしまうのに似ています。いいトレーダーとはそういう下作業、前準備がしっかりと出来て、ダウンサイド・リスクをきちんと抑えられる人を言うのだと思っています。そして、そういうことが出来る人はそう多くはいません。ベンツは誰でも運転出来ますが、ベンツは誰にでも作れる訳ではないのです。