ダボス会議がNYで行なわれています。街中が威信を賭けて治安の維持に努めています。至る所に州内からかき集めたのであろう警官が闊歩しています。会場となっているウォルドルフ・アストリア・ホテル(エディー・マーフィーの「王子様NYへ行く」という映画で王様が泊まっていたホテルです)の周辺は物々しい感じで、バリケードが多く建てられていて人通りも少なくなっています。ホテルのすぐ近くまでデモ隊が来ますが、普段は案外静かで、黙ってプラカードを持って立っている人たちが数十人いる程度です。その人たちと道を挟んで反対側には制服警官が100人ほどまとまって待機して何やら蠢いているので、「警官」という先入観念を除外して見るとどっちがデモ隊が見分けがつきません。世界経済フォーラムの中で議論している人たちの多くがアンチ・グローバリゼーションを熱心に説いていて、会場の外も中も主張に大きな違いは無いように思われます。参加者の中には、会議に招待されていなければ外でデモに参加している人もいるのではないでしょうか。テロの目的が自由経済を停滞させることだとすると、これだけ無駄なことをさせているのは望外の結果かも知れません。一方で無駄こそ経済の活力だという考えもあるでしょう。そんな風にパラドックスに満ちた会議も残す所あと一日です。パラドックスの存在を認識させることが、もしかしたらダボス会議の最大の貢献かも知れません。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。