円・ドルがたやすく130円を超えました。今月に入ってからいきなり5%以上も円は安くなっています。円安は基本的に日本経済にとってはいいことだと思いますが、改革が出来ない、或いは景気があまりにも悪いという理由による、マーケットの参加者からの一方的な見放し宣告だとすると、この円売りは何処までも止まらないかも知れません。「ある程度の円安はいいことだが、問題はある所でちゃんと止まるかだ。」という人が多いようですが、それはやり方次第だと思います。為替の誘導は、しっかりとした意思を持つべきです。例えば「日本経済にカンフル剤を打つために、140円までの円安を望む。」ときちんと政府が宣言をすれば、実際に円がそこまで売られる過程が介入など恣意的なものによるか否かに関わらず、その水準で円安を止めることが可能でしょう。逆にマーケットに押されて勝手に動いたものは、マーケット以外誰にも止めることは出来ません。「為替は市場に委ねる。」的な発言が我が国の政治においてはまま聞かれますが、為替政策こそ、主権国家にとってもっとも政治的なアクションの1つであり、明確な意思を持つことにより初めてコントロールも可能なものだと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。