最近ある新聞社に教育問題について聞かれました。教育現場の荒廃とか、教育水準の低下とか、いろいろなことが世間では言われているようです。しかし私はさ程心配していません。何故なら古今東西、教育システムが原因で国が傾いたというようなことを聞いたことがないからです。教育システムと教育は別個の問題です。教育システムが悪化しても、それが即ち教育の内容が劣化することにはならないと思います。学校がダメでも子供たちは塾へ行くことができますし、どこでも必要なことを教えてくれなければ、自分で本を買って勉強することもできます。国のためになりたいとか、科学者として新しい発見をしたいとか、自らの能力を高めて出世したりお金を稼ぎたいとか、そういった目標さえしっかりあれば、あとは学校がダメでも先生がダメでも子供たちは勝手に教材を探して勉強するでしょう。ですから我々は教育システムのことを杞憂すべきではなく、それよりも子供たちにしっかりとした国の将来像を提示して目標が持てるようにする責任があると思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。