ヘッジF円買い急増とベッセントの関係
9月に、米ドル/円は一時152円まで急落した。そうした中で、ヘッジFの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、買い越し(米ドル売り越し)が10万枚以上に急拡大した(図表1参照)。このことから、7月末の日米協調円買い介入でも割れなかった155円を割れて、米ドル安・円高が広がった動きを主導したのは、ヘッジFの円買い積極化の可能性があっただろう。
それにしても、CFTC統計の投機筋の円買い越しが10万枚以上に拡大したのは、2025年以降の他にはなかったこと(図表2参照)。ではなぜ、2025年以降、ヘッジFを中心とした投機筋の円買いが、それまでには見られなかったほどに急拡大するようになったのか。
2025年1月に第2次トランプ政権が発足し、ヘッジF業界出身のベッセント氏が米通貨政策の責任者である財務長官に就任。それまでにはなかったほどにヘッジFなどの投機筋の円買いが急拡大するようになった。以上のことから、ヘッジFの円買い拡大は、やはりベッセント米財務長官と何らかの関係があるのではないか。
金利差から見ると不合理な円買い
ベッセント氏が財務長官に就任した2025年1月以降、米ドル/円はほぼ一本調子で下落に向かい、2025年4月には一時140円を割れた。この動きは、日米金利差(米ドル優位・円劣位縮小)にほぼ沿ったものだった(図表3参照)。その中で、CFTC統計の投機筋の円買い越しは、それまでの最高を大きく更新、一時18万枚近くまで拡大した。
以上を踏まえると、日米金利差縮小を手掛かりにヘッジFなどの投機筋が米ドル売り・円買いを拡大した結果、米ドル安・円高が進み、いわゆるファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)を反映した動きのように見える。
ただ、この2025年前半当時、日米金利差は、政策金利で見るとなお4%以上と大幅な米ドル優位・円劣位の状況が続いていた。その意味では、金利差からするとなお円買いはかなり不利な状況に変わりなかったとみられる。
2008年のいわゆる「リーマンショック」後に米国もゼロ金利政策を行うことになると、日米政策金利差はほぼゼロといった状況が、その後かなり長い間続くところとなった。ただ、そういった中でも、投機筋の円買い越し拡大は限られ、10万枚以上に拡大するようになったのは、すでに見てきたように2025年以降、別な言い方をするとベッセント氏が財務長官に就任するまでなかったわけだ。
ヘッジFの円買いとベッセントのリフレ終了要請
2026年9月、一時152円まで米ドル安・円高となった局面でベッセント米財務長官のいわゆる「胴元発言」が話題になった。この発言の真意は分からないが、米通貨政策の責任者である自身の円高の可能性への裏付けなどにより、金利差から見ると不合理な円買いをヘッジFが積極化したということについて言ったのであれば、それは確かに「私がヘッジFの胴元」ということなのかもしれない。
2025年前半に、ヘッジFの円買い拡大とともに一時140円割れとなった円高は、その後円安に転じた。そうした米ドル高・円安の動きは、日米金利差からかい離し、むしろ日本の長期金利上昇と連動するようになった(図表4参照)。長期金利上昇は、高市政権の積極財政への懸念、別な言い方をすると「高市リフレ」への懸念の結果とされた。
9月以降、ヘッジFが円買いを拡大する一方で、ベッセント米財務長官は「日本はリフレ政策をやめるべき」との発言を繰り返した。これも、ヘッジFとベッセント米財務長官が連携して円高への反転を目指しているように見えなくない動きと言えるのではないか。
投機筋を「味方」にしようとする「胴元」ベッセント?
各種の調査によると、代表的な投機筋であるヘッジFの取引は、世界の為替市場の取引の1割近い規模とされる。その意味では、そういったヘッジFなど投機筋が味方になるか敵になるかは、為替相場の行方においてかなり重要な意味を持ちそうだ。
ベッセント米財務長官は、自身がヘッジF業界出身ということもあってか、ヘッジFを「味方」にして円安の流れを変えようとしているようにも感じられる。
