まもなく夏本番、「サマーストック」の株価は暑さで上昇するのか

6月も終盤ですが、雨や曇りの日が続き、梅雨真っただ中という地域も多いでしょう。梅雨が明ければ本格的な夏がやってきます。気象庁によると、関東甲信地方の梅雨明けの平年は7月19日頃です。例年なら、あと1ヶ月足らずで夏本番です。

暑い夏になると、エアコンの販売が伸びるほか、飲料やビール、アイスクリームなどの消費も増えやすくなります。また、制汗剤や日焼け止めなどの季節商品の需要拡大も期待されます。このため、こうした夏関連の商品を扱う「サマーストック」の業績改善期待が高まり、株価を押し上げる要因になると考えられています。

では、実際に、暑い夏の株価は高いのでしょうか。今回は過去のデータを使って検証しました。

過去データで検証:8月は「暑いほど株価堅調」、7月は意外な結果に

気象庁のウェブサイトでは、過去の気象データを誰でも取得することができます。気象庁では、最高気温が30℃以上の日を「真夏日」、35℃以上の日を「猛暑日」と定義しています。そこで、東京の7月と8月について、真夏日の日数と、その月の日経平均株価の騰落率の関係を調べてみました。なお、今回は真夏日の影響を確認するため、35℃以上の猛暑日を除いた30℃以上35℃未満の日数を用いて集計しています。

8月は「暑いほど株価は堅調」

まず、夏本番となる8月を見てみましょう。図表の8月を見ると、「例年より暑い」の平均騰落率は2.3%となっています。1970年以降、真夏日が26日以上となった8月は5回ありましたが、それらの年の8月の日経平均株価騰落率を平均すると2.3%でした。「例年並み」や「例年より暑くない」と比べても高いことから、暑い夏ほど株価が堅調になりやすいことが分かります。

【図表】夏の暑さと8月の日経平均株価の平均騰落率
注1:分析期間は1970年から2025年までの結果
注2:東京の1日の最高気温を使って計算している
出所:気象庁、日本経済新聞社のデータを用いて、マネックス証券作成

7月は例年並みの暑さの方が景気や株価にはプラス

一方、7月は少し異なる結果となりました。7月は「例年並み」の平均騰落率が3.1%と最も高く、「例年より暑い」はマイナス1.3%でした。

7月は梅雨明けの時期にあたります。7月に真夏日が極端に多い年は、梅雨の降水量が少なく、水不足への懸念が高まることがあります。実際、過去には取水制限が実施され、経済活動に支障が生じたケースもありました。また、農作物の生育への悪影響なども懸念されるため、投資家心理や景気見通しにマイナスに作用する可能性があります。このため、7月については「暑ければ暑いほど良い」というわけではなく、例年並みの暑さの方が景気や株価にはプラスに働きやすいようです。

こうした結果を見ると、夏本番となる8月については、「暑い夏の株価は高い」というアノマリーが当てはまるようです。

アノマリーの落とし穴、「暑すぎる夏」は逆に株価のマイナス要因

そして、実はさらに注意すべき点もあります。

図表では35℃以上の猛暑日を除いて集計しました。というのも、猛暑日に着目して集計すると、意外な結果が見られたからです。2015年の8月は猛暑日が8日ありましたが、それ以降、8月の猛暑日が8日以上となった年は5回ありました。これら5回の8月の日経平均株価騰落率を平均するとマイナス0.6%でした。

一方、2015年以降で猛暑日が8日未満だった年の8月の日経平均株価騰落率は平均プラス0.8%でした。近年は地球温暖化の影響もあり猛暑日が増えているため、足元の投資環境に近い2015年以降に限定して集計しました。その結果、猛暑日が多い8月ほど株価が弱い傾向がみられました。

「暑い夏の株価は高い」というアノマリーには、実は続きがあります。データから見えてきたのは、「暑い夏の株価は高いが、暑すぎる夏の株価は安い」という、より正確なアノマリーです。

なぜ、暑すぎる夏は株価にとってマイナスなのでしょうか。

適度な暑さであれば、エアコンや飲料などの需要が増え、企業業績にプラスに働きます。しかし、猛暑が行き過ぎると状況は変わります。高温によって屋外での活動が敬遠されるほか、熱中症対策などによる労働時間の制約から生産活動にも影響が及びます。また、農作物の生育不良や電力需給のひっ迫なども懸念されます。

2026年の夏はどうなる?「スーパーエルニーニョ級」に要注意

では、2026年の夏はどうなるのでしょうか。

気象庁も3ヶ月予報を公表していますが、足元の予報としては6月23日に公表された大手予報機関のウェザーニュースの見通しが参考になります。これによると、関東甲信地方では7月、8月ともに平年より気温が高くなる見込みです。2026年の夏も暑くなりそうです。

さらに、2026年はスーパーエルニーニョ級の暑さとなる可能性も指摘されています。スーパーエルニーニョとは、太平洋赤道域東部の海面水温が平年を大きく上回る極めて強いエルニーニョ現象のことです。一般にエルニーニョは日本で冷夏となるイメージがありますが、スーパーエルニーニョ級となるほど極端な気象現象が発生すると、世界各地で異常気象が起きやすくなります。足元では、日本でも厳しい暑さへの警戒が高まっています。

なお、過去には1982年、1997年、2015年、2023年にスーパーエルニーニョ級の現象が発生しました。これらの年の7月の日経平均株価騰落率の平均はマイナス0.2%、8月はマイナス5.1%でした。これは、「暑い夏の株価は高いが、暑すぎる夏の株価は安い」という今回の分析結果とも整合的です。
夏は暑い方が消費の拡大を通じて株価には追い風となりやすい傾向があります。

しかし、スーパーエルニーニョ級の異常な暑さとなれば話は別です。2026年の夏は、暑さが株価の追い風となるのか、それとも夏枯れ相場の引き金となるのか、例年以上に注意が必要な夏となるかもしれません。