先週の中国株ですが上海総合指数と深セン総合指数、創業板指数は続伸、香港ハンセン指数は反発となりました。11月21日(金)市場の引け後に中国人民銀行(中央銀行)が2012年7月以来となる利下げを発表しました。(1年物)貸出基準金利は40ベーシスポイント引き下げられ5.60%に、預金基準金利の方は25ベーシスポイント引き下げられ2.75%となります。これを評価して、中国本土の株式市場は週初から大幅上昇となっています。セクターや業種別では大きな債務を抱える大型国営企業や不動産株などが力強く上昇し、相場を牽引しました。その他では総額660億元の鉄道プロジェクトが認可されたことから鉄道関連株が、国務院(中国の内閣)が大気汚染防止規制を強化したことから環境関連銘柄が買われています。

ちなみに、2012年6月と7月に2度の利下げを行ったときも、不動産株は上昇しました。一方で前回の利下げ時には、銀行株は下落しました。基準金利を下げたのですが、実際の銀行の預金金利には上限に幅を持たせたため、競争が起きて銀行の収益を圧迫すると見られたのです。そして今回の利下げでも銀行株は下げてスタートしました。しかし、その後は大きく上昇しています。これは3つの理由があります。1つは11月27日(木)に中国人民銀行が銀行預金保護制度の導入準備を進めていることが報道されたこと。2つめは過去の株価下落と業績の拡大によって魅力的なバリエーションまで株価が下がっていたこと。3つめは利下げによって、貸出先の財務状況の改善が期待できることです(銀行株は不良債権の増加懸念から下がっていたのですが、その懸念が後退したわけです)。銀行株は株価指数の構成ウェートでは大きな部分を占めるため、上海総合指数は大きく上昇。結果として3年3ヶ月ぶりの高値を付け、11月28日(金)は7日続伸で週を終えています。

一方ハンセン総合指数は反発となったものの中国本土株と比較すると弱い動きとなっています。まず先々週は11月17日(月)から滬港通(香港と上海の証券取引所の相互取引)が開始されたものの、中国本土からの資金流入が予想以上に少なく、逆に株価は急落しました。そして先週は前述の中国の利下げで大幅上昇から始まったものの、原油価格が急落したことから、指数構成ウェートの大きな部分を占める中国石油(00857)や中国石油化工(00386)が大きく下落し、相場の足を引っ張りました。しかしその一方で中国本土の株式市場が上昇していることから運用利回りの上昇を期待して中国人寿保険(02628)などの保険株が買われた他、工商銀行(01398)などの銀行株も上昇しており、全体的な相場の印象は株価指数の上昇幅よりも強い感じが持てます。今週は12月1日(月)に11月のHSBC中国製造業景況感指数(確報値)と11月の中国公式製造業景況感指数が、12月3日(水)に11月のHSBC中国非製造業景況感指数と11月の中国公式非製造業景況感指数が発表されます。

コラム執筆:戸松信博