通貨当局、利上げと単独介入だけでは円安阻止を楽観視せず

6月16日、日銀は2025年12月以来の利上げを決めると見られている。普通、日銀の利上げは円買い要因だが、すでに織り込まれていることなどから、利上げが決まっても円高になるとの見方は少ない。実際、前回、2025年12月に日銀が利上げを決めた後も、米ドル/円は154円台から157円台へ、逆に米ドル高・円安となった(図表1参照)。では今回も、予想通りの日銀利上げでも、為替相場はむしろ円安に向かうのか。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年11月~2026年1月)
出所:マネックストレーダーFX

日本の通貨当局は、4月末から円安阻止の為替介入を再開した。その上で、この6月の日銀利上げは、円安阻止には不可欠な金融政策の支援と考えていた。その意味では、日銀の6月利上げは、過度な円安を阻止する条件を1つクリアするものと考えているだろう。ただ、当局は日銀利上げとこれまでの日本の単独介入だけで、根強い円安マインドを払しょくし、円安を阻止できると楽観視しているわけでもなさそうだ。

サミットより日銀会合を優先する介入責任者

当局は、根強い円安マインドを払しょくするためには、米ドル/円の水準を足下の160円程度から少なくとも150円まで変える必要があり、そのためには日本単独の為替介入と日銀利上げだけでは足りないだろうと考えている。

日銀の6月利上げについては、円安を止める役割としては不十分で、むしろ円安再燃のきっかけになる懸念もあるとの指摘も少なくない。ただそれは、当局においてもすでに了解済みなのではないか。

6月16日の日銀による金融政策発表は、15~17日の仏エビアン・サミット(先進国首脳会議)の日程と重なる。為替介入の実質的な責任者である三村財務官は、サミットに出席する日本の高市総理の代理という意味の「シェルパ」の1人を務めていることから、普通はサミットに同行する。ところが、今回はサミットに同行せず、東京に滞在するのではないかとの見方が囁かれている。

ではその目的は何か。それは、日銀利上げのタイミングに合わせて日本の通貨当局が米ドル売り・円買い介入に動くことで、円安の是正を加速させることの陣頭指揮を取るということなのだろうか。

日米協調介入はあるのか?

2024年7月、当局が米ドル売り・円買い介入に動くと、米ドル/円は1ヶ月もしない中で161円から141円まで約20円もの急落となった。この当時、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越しは18万枚と過去最高規模に達していた(図表2参照)。まさに円売り「バブル」のようになっていたところで、介入がその「バブル破裂」のきっかけの役割となったことが、円安から円高への大反転が起こった一因と考えられた。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2024年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

投機筋の円売り越しは、先週(6月8日週)にかけて15万枚近くに拡大、2024年7月の円売り「バブル」に迫る動きとなってきた。日銀利上げに為替介入を重ねることで、投機筋の行き過ぎた円売りを反転させ、再び円安を是正することができるだろうか。

ただ、2024年7月に為替介入を行った時、米ドル/円の120日MA(移動平均線)かい離率は5%以上となっており、テクニカルに円安の「行き過ぎ」懸念もあったのに対し、足下の同かい離率は1%程度にとどまっており、円安の「行き過ぎ」懸念は強くない(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円の120日MAかい離率(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

円安から円高への大反転を実現した2024年7月と最近では、投機筋の行き過ぎた円売りなどの類似点がある一方で、テクニカルには円安「行き過ぎ」懸念が強くないなどの違いもある。そうした中で円高へ反転させることができるだろうか。

もしも日銀利上げと日本単独の為替介入でも円高への反転が鈍い場合は、1月23日の日米協調「レートチェック」からさらに踏み込む形で、日米協調米ドル売り介入が実現する可能性も必要になるのではないか。