IMFの世界経済見通しでは、地政学への警戒が示されているものの、成長率の見方に大きな変化はありません。株価もショックを織り込んだ後、落ち着きを取り戻しています。一見すれば、世界経済は不安定な国際情勢を吸収しているようです。
一方で、進む変化もあります。象徴的なのが、一物一価の法則の揺らぎです。原油には記録的な地域差が生じ、半導体チップやAI関連サービスをめぐり米中間で価格差があります。国家間の関係の変化、関税や制裁が地域のモノの値段を変えました。
市場参加者には追い風でもあります。米大手銀行決算ではトレーディング収益が好調でした。価格差やボラティリティの高まりにより、ヘッジ、リバランス、裁定取引の需要が増えています。モノを運ぶ商社にも追い風ですし、市場間の価格差に着目するマクロ型ヘッジファンドにも、新たな投資機会となっています。
価格差が解消されるのか、分断を前提に価値を再定義する時代に入ったのか。今の世界構造は、当たり前となった一物一価が崩れる可能性を感じさせます。
裁定機会は、短期的な収益機会だけでなく、歴史的にイノベーションも促してきました。一物一価が揺らぐ時代は、市場の混乱であると同時に、収益機会であり、適応の機会でもあります。価格差を見つけるだけでなく、その背後にある世界の変化と適応を読みとることも重要なのでしょう。
