先週(4月13日)の振り返り=ホルムズ海峡封鎖解除で一時157円台半ばまで円高に
ユーロなど続々とイラン危機前の水準に戻る=円高への戻り鈍いのはなぜか
先週は、4月17日にイランが米国等との停戦中にホルムズ海峡通航を開放するとしたことを受けて原油価格が急落した。それに連れる形で米ドル/円も一時157円台半ばまで大きく下落しました。ただ、引けにかけては158円台半ばまで反発し、約1ヶ月も続く158~160円を中心としたレンジのブレイクとはなりませんでした(図表1参照)。2026年2月末の米国等によるイラン攻撃開始前よりまだ米ドル高・円安水準での推移が続いたわけです。
ただしこれは、為替相場全体の傾向ではなく、むしろ米ドル/円の動きがやや異例なのかもしれません。米ドル/円以外だと、ユーロ/米ドルなどは先週にかけて、2月末のイラン攻撃以前の水準までユーロ高・米ドル安にほぼ戻りました(図表2参照)。このように見比べると、米ドル安・円高への戻りの鈍さが目立ちますが、それはなぜなのでしょうか。
イラン危機前よりはまだまだ原油高=株やユーロ等は「戻り過ぎ」なのか
イラン攻撃が始まる前の水準まで戻ってきたのはユーロ/米ドルなどの為替相場だけでなく、日米など主要な株価指数にも見られます。主要な株価指数の中には、イラン攻撃開始前の水準を上回るケースも出てきました。これについてイラン戦争終結への期待が主因といった解説も聞かれますが、果たしてそうでしょうか。
今回のイラン戦争における最も大きな影響とされるのは、ホルムズ海峡封鎖などによる原油などエネルギー供給不安でしょう。それをより素直に反映するのは、原油などエネルギー価格の高騰です。エネルギー価格は、4月17日にはホルムズ海峡通航の再開を受けてWTIは80米ドル台前半まで急落しましたが、イラン攻撃開始前には60米ドル台だったため、依然としてそれより高い水準での推移が続いています。原油価格との関係でみると、ユーロ/米ドルなどはユーロ高・米ドル安に「戻り過ぎ」です(図表3参照)。
原油価格との関係でみると、むしろ米ドル安・円高への戻りが鈍いことの方が、なおエネルギー供給不安が続いている状況に対する素直な反応のように見えます(図表4参照)。そうであれば、為替相場のユーロ高・米ドル安、そして株価の反発などは、イランとの戦争の影響を楽観視し過ぎた、「行き過ぎ」の結果なのでしょうか。
ユーロ買いポジション消滅後は金利差変化に反応
2026年2月末のイラン攻撃開始前の水準までユーロ高・米ドル安に戻ってきた動きは、米独金利差(ユーロ劣位・米ドル優位)縮小に追随したようにも見えました(図表5参照)。イラン攻撃開始後のユーロ安・米ドル高は、米独金利差縮小を尻目に展開した結果でもあったのですが、それが金利差変化に素直に反応するようになったのはなぜか。
代表的な投機筋のポジション・データであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計における投機筋のユーロ・ポジションは、2026年2月末にイラン攻撃が始まる前までは比較的大幅なユーロ買い越し(米ドル売り越し)となっていました(図表6参照)。エネルギー供給リスクに弱いユーロ圏の通貨が、シェール原油登場以降「世界一の産油国」となった米国の通貨に対して大幅な買い越しとなっていたため、その見直しを急いだ結果がユーロ売り・米ドル買いだったのではないでしょうか。
こうした中で、CFTC統計によると、投機筋のユーロ買い越しは2026年3月末にかけてほぼ消滅しました。すると、この頃から独米金利差変化に沿う形でユーロ高・米ドル安へ戻る動きになりました。
以上のことから、イラン攻撃後に一時1.14ドル割れ近くまでユーロ安・米ドル高となったのは、エネルギー供給リスクに弱いユーロが大幅な買い越しになっていた状態の修正を急いだことが大きく、そうであるならそれはいわゆる「有事の米ドル買い」とは違ったのではないでしょうか。
円高への戻りが鈍いのは投機円売り拡大が一因か
一方で、投機筋の円ポジションは、イラン攻撃開始以降売り越し(米ドル買い越し)が大きく拡大し、一時は10万枚近くまで拡大しました。原油等の供給リスクに弱い日本の通貨が売られることは理屈としてはおかしくありません(図表7参照)。
ただ、2025年のトランプ政権開始以降、円売りに慎重だった投機筋がイラン情勢を受けた円安に積極的に関与する形になっている可能性はありそうです。米ドルに対するユーロ高に比べて円高への戻りの鈍い状況が続きましたが、それは投機筋の円売りも一因だと考えられます。そうであれば、投機筋が円売りを続けるか、それとも円買いに転換するかは、円安修正の1つの鍵になる可能性があるのではないでしょうか。
CFTC統計の投機筋のポジションは、おもにヘッジファンドの取引が反映されているとみられていますが、ヘッジファンドは取引の過去半年平均、120日MA(移動平均線)が損益分岐点の目安になっているとの見方があります。
米ドル/円の120日MAは、4月17日時点で156.6円なので、それを下回って米ドル安・円高となり、米ドル買い・円売りポジションが含み損に転落、さらに損失拡大の可能性が高まる場合は、投機筋の円売りポジションの処分に伴う円の買い戻しが米ドル安・円高を後押しする波乱要因になるかもしれません(図表8参照)。
今週(4月20日)の注目点=約1ヶ月も続く158~160円レンジ・ブレイクなるか
今週の米ドル/円は156~160円で予想
今週は引き続きイラン情勢をにらみながら、米ドル/円は長く続く158~160円中心のレンジ・ブレイクする動きに注目したいと思います。ホルムズ海峡の封鎖解除が続き、エネルギー供給不安の後退が続いた場合は、理屈的にはレンジの円高方向へのブレイクの可能性が高まるでしょう。その場合は、投機筋の円売りポジション見直しが円高の行方を左右する要因の1つになるのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は156~160円で予想します。
