トランプ政権発足以降の最高を更新した投機筋の円売り越し

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、4月7日時点で売り越し(米ドル買い越し)が9.4万枚に拡大した(図表1参照)。これは、2025年1月のトランプ政権発足以降の円売り越しの最高水準を更新したことを意味する。またこの統計では、経験的に10万枚以上が円売り越しの「行き過ぎ」圏。その意味では、最近にかけて投機筋の円売りの「行き過ぎ」懸念が強まり始めた可能性がありそうだ。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

CFTC統計の投機筋のポジションは、主にヘッジファンドの取引を反映していると見られている。そのヘッジファンドは、トランプ政権発足以降は、それまでの積極的な円売り姿勢を転換し、逆に円買いを積極化することで円高を主導する局面もあった。背景として、円安など貿易相手国の通貨安に批判的なトランプ米大統領の姿勢や、それを受けたトランプ政権の通貨政策との連携も注目されていた。

米通貨政策と連携した投機筋の円売り慎重姿勢は変わったのか?

米通貨当局は1月23日、為替介入の前段階と理解されている「レートチェック」で円安けん制に動いた。これは、上述のように過度な円安を容認しないトランプ政権の通貨政策を再確認する動きとも理解できた。

そうした過度な円安を容認しない方針が変わらず、ヘッジファンドがそれと連携しているなら、円売り拡大にはおのずと限度があるだろう。そうではなくて、ヘッジファンドが円売り積極化に転じたということなら、逆にトランプ政権の円安を容認しない方針自体が変わり始めている可能性も考える必要が出てくる。

過去の円安急反転の分岐点になったヘッジファンドの損益分岐点、120日MA

投機筋の円売り拡大は、これまで日本の通貨当局の円安を反転させた為替介入戦略とも重要な関係があった。日本の当局は、2022年と2024年に断続的な米ドル売り・円買い介入により円安の反転に成功したが、その鍵になったのが投機筋を過大な円売りポジションから円買い戻しに転換させたことだった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

投機筋の代表格であるヘッジファンドのポジションは、過去半年平均である120日MA(移動平均線)が損益分岐点の目安とされる。このため米ドル買い・円売りポジションも、米ドル/円が120日MAを割れると含み益から含み損に転換した可能性が高まることになる。

例えば2022年の介入局面は9月と10月の2回だったが、9月の介入では米ドル/円は120日MA割れには至らなかった。その意味では米ドル買い・円売りポジションは含み益が維持された可能性が高かった。これに対して10月の介入では間もなく米ドル/円は120日MAを割り込み、すると米ドル安・円高が急拡大に向かった(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と120日MA(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

足下の120日MAは156円半ば=円買い戻し拡大の目安

要するに、米ドル/円の120日MAを割り込むことで米ドル買い・円売りポジションが含み損に転落し、損失拡大を懸念したポジションの処分や、米ドルの売り戻し・円の買い戻しが強まった結果、米ドル安・円高が加速したと考えられた。同様に、2024年の4月と7月の2回の介入局面についても、なぜ後者において円安から円高への急反転が起こったか、うまく説明できそうだ。

以上のように、過大な投機筋の円売りポジションをいかに円買い戻しに転換させるか、その重要な目安は、円売りポジションの損益分岐点となる120日MA割れだ。その米ドル/円の120日MAは4月10日時点で156.4円。つまり、為替介入などにより、米ドル/円が120日MAを大きく割れて、円売りポジションの損失が拡大する懸念が強まるようなら、投機筋の円買い戻しが拡大し、円高への動きが広がる可能性があるのではないか。