昔、占い師に占ってもらった時のこと。
「お宅の庭に...」
「うちはマンションなので庭はない」
「お宅のマンションの前に...」
「マンションの前に?」
「一本の大きな木があるだろう」
「ない」
「なくて良かった。あったら大変なことになっているところであった」

昨日、メディアの取材を受けた。
「強気な広木さんがこの頃は慎重スタンスを示されていますね。今週の相場展望では日経平均5万円割れもあり得るとされていましたが…」
「(5万円割れが)なくて良かった。あったら大変なことになっているところであった」

日経平均5万円割れの最悪シナリオは一旦後退

日経平均5万円割れもあり得るとしたが相場は急反発。5万円割れどころか日経平均は一時5万6000円台を回復した。弱気予想は大外れではないかという批判も聞かれる。しかし、「5万円割れもあり得る」というのは相場の方向感(上がる・下がる)を予想したものではない。米国がこれ以上期限を延長せずにイランの電力施設を攻撃するリスクも相当程度あったため、その場合のリスクシナリオを提示しただけである。その可能性も少なからずあるので、頭の隅に入れておきなさいよ、という警鐘である。いや、実際問題として、なくて良かった。あったら大変なことになっているところであったのだから。

しかし、これですべて解決か、というわけにはいかないだろう。メディアの取材でもそう述べた。米国とイランは戦争をやめたがっているが、イスラエルがそれを引っ掻き回すリスクが残る。

イスラエルという最大の不確定要素

『The Economist』4月8日の記事「Partner, scapegoat or spoiler? Israel’s place in a fragile ceasefire(パートナーか、身代わりか、あるいは邪魔者か。脆弱な停戦におけるイスラエルの立ち位置)」はまさにその点に言及している。

イスラエル国内の右派勢力は、中途半端な停戦を「敗北」と見なしており、これが政権の判断をより強硬なものにさせている。記事は、イスラエルが自らの生存をかけて単独行動(イランへの直接攻撃など)に出るリスクが、停戦を根底から覆す「最大の不確定要素」であると警鐘を鳴らしている。

懸念は現実のものとなる兆しが早くも出てきた。

米国とイランの2週間の停戦初日、イスラエルがレバノンの武装組織ヒズボラを狙って大規模な空襲をした。イスラエルは今回の停戦合意はレバノンには適用されないとして攻勢を強めている。これにイランは「停戦合意違反」と反発。言うまでもないがヒズボラは、イランの支援を受けて設立された親イラン組織。イランはヒズボラに資金、武器、訓練を提供しており、ヒズボラはイスラエルに対抗する代理勢力であり、イランにしてみれば身内が攻撃を受けたのも同然だ。

イラン国営メディアは、イスラエル軍のレバノン攻撃の報復としてホルムズ海峡を封鎖したと報道した。停戦を仲介するパキスタンのシャリフ首相は、レバノンも含めて停戦になると発表する一方、トランプ米大統領は、レバノンは停戦合意の対象外だと早くも関係者の間で意見の食い違いが見られる。

これこそイスラエルの思惑通りだろう。3月27日のストラテジーレポート『「見えない停戦」を見据える市場』で、「米国が仕掛けた(あるいはイスラエルに乗った、乗せられた?)イラン攻撃であったが、仕掛けた側の米国がこの戦争を終わらせたがっている」と書いたが、この戦争は3通りの解釈が可能だ。

米国が仕掛けたものか、あるいはイスラエルの意図に米国が便乗したものか。それともイスラエルにまんまと乗せられたか、である。

いずれにせよ、完全なる停戦までの道のりは決して平たんなものではないだろう。無論、マーケットの波乱も続く。そう思って臨むべき相場である。