AI投資拡大で進む「ハイパースケーラーの負債依存」
グーグルの親会社であるアルファベット[GOOGL]が円建て社債を発行すると報道されている。アルファベットはこれまでも複数の通貨で社債を発行し、資金を調達してきた。今回の円建て債は調達市場・通貨分散の一環だが、よりシンプルな捉え方は、時価総額が世界最大級のビッグテックでさえ、自前のキャッシュフローではAI投資資金を賄えず、ますます負債に依存する構図が進んでいるということである。
アマゾン・ドットコム[AMZN]、グーグル親会社のアルファベット、マイクロソフト[MSFT]、メタ・プラットフォームズ[META]の4社の2026年設備投資額の合計は前年比で7割超増加の7250億ドルに達する見込みだ。
これだけの巨額投資が、果たしてペイするのか ‐ つまり採算がとれるのか ‐ という疑念はこれまでも再三、蒸し返されてハイテク株の下落要因となってきた。しかし、答えは数年先になってみないとわからないうえに、足元ではAIの社会実装が加速し、その利便性を多くのひとが享受しているなかでは警戒論は楽観論に押されがちだ。
よく引き合いに出される2000年ごろのITバブルとの比較では、当時は利益の裏付けのない会社まで買われるような、まさに浮かれたお祭り騒ぎだったが、足元の相場は業績面の裏付けがあるのでバブルではないとの声が多い。
しかし、一部メディアが報じているように、ビッグテックの直近の決算は、出資しているAI企業の株の評価益を利益計上しているものが多く目につく。2025年11月に書いた「AIはバブルか」(2025年11月26日付け)というレポートで述べた「AI企業同士で内輪の巨大な資金循環=錬金術」という構図に変わりない。
仲間内で融通し合っているうちはまだいいが、問題は巨額の資金調達を通じてクレジット市場にも影響を持ち始めている点である。
長期インフラ投資であるということと財務的な健全性は別の話
データセンターなどAI周りは次世代の巨大インフラであり、AI投資は短期テーマではなく、長期インフラ投資であるという意見はおそらく正しい。しかし、そのことと財務的な健全性は別の話である。この先、
・ハイパースケーラー各社の負債依存度が急上昇する
・フリーキャッシュフローが悪化する
・AI収益化が遅れる
・データセンター稼働率が低下する
という兆候が出てきた時、市場は一気に警戒感を強めるだろう。
マクロ経済への影響も無視できない。これだけ巨額の設備投資が実行されると、それだけでインフレ加速の要因になる。実際、データセンターでの部材(ケーブルなど)が値上がりし、それはメモリーやCPUにも波及している。このところレポートで書いているインテルなどの上昇の背景だ。
そしてクレジット市場、というより金利体系そのものへの影響が重要な点だ。AIインフラ投資が世界的に金利上昇圧力を生むというシナリオである。
AIインフラ投資が引き起こす「インフレと金利上昇」
AIブームを巨視的に見ると、その本質は設備投資の強力なサイクルだ。電力、半導体工場、通信網といった資本集約的な投資による波及効果の行きつく先を考慮するべきだろう。よく指摘されるように、2000年代の中国インフラ投資や、19世紀の鉄道投資に近いものだ。
つまり世界経済全体で、巨額設備投資が起こると、電力需要が急増し、資材需要や建設需要も増加、端的にいえば資金需要が増加する。ありていに言えば、カネが要るので、カネの奪い合いになり、その結果、世界的な実質金利の押し上げ要因になるということだ。
この先はインフレと金利の双方に上昇圧力がかかり続けるのが世界経済のメインシナリオになる。それに上場企業とその集合体である株式市場が抗していけるかどうか。そういう大きな文脈のなかで、このAIブームをとらえる必要がある。
しょせんは市況に依存する汎用品であるメモリ・ブームも非常にフラジャイル(脆弱)だと思う。キオクシアホールディングス(285A)がいつまで買われるか、無論、それは誰にもわからないが、ここからは「一旦の天井」を意識し始める頃合いではないか。
