2016年の米大統領選挙で主流だった「トランプ暴落」予想
2016年の米大統領選挙は、日本時間の11月9日に開票が進んだ。その中で下馬評を覆し、共和党のトランプ候補優勢が明らかになるにつれ、世界的に株価が急落した。そして米ドル/円も105円台からあっという間に101円台まで急落した。
開票が始まるまで、「まさかトランプが勝つことはないだろう」というのが基本的な見方であった。その一方で「万が一にもトランプが勝ったら世界経済は大変なことになり、株も米ドルも大暴落しかねない」との見方が主流だったことから、それを受けた動きだったのだろう。
しかしその見方はわずか半日程度で急反転した。トランプ次期米大統領誕生を受けて、欧米の株価先物は反発に転じ、米ドル/円も105円に戻した。「トランプ暴落」予想は消え去り、その後は逆に米ドル、米金利、米国株が急上昇に向かう「トランプ・ラリー」が起こった(図表1参照)。
「Brexitショック」が影響した過剰な悲観論=結果は「トランプ・ラリー」
なぜ「トランプ暴落」予想は外れたのか。トランプ候補の選挙公約は大型減税に代表されるように、民主党・クリントン候補以上に景気刺激的なものが中心だった。その意味では、予想外のトランプ勝利が「トランプ・ラリー」を起こしたのも当然のように思える。後になってみると、むしろ「トランプ暴落」予想が主流だったことの方が、よほど不思議な気がする。「トランプ暴落」予想の背景には、当時の世界情勢の影響があったのではないか。
この米大統領選挙の半年近く前の2016年6月24日、英国のEU離脱を問う国民投票が予想外の賛成多数となると、世界的に株価が急落した。米ドル/円も106円台からその日のうちに100円割れ、98円台までの急落となった。いわゆる「Brexitショック」と呼ばれた動きである。その記憶がまだ鮮明に残る中で、世界一の超大国・米国の大統領選挙が行われた。もし悪名の高いトランプ氏が万一にも勝利するようなら、「Brexitショック」をはるかに上回るネガティブ・サプライズになるだろう。そのような発想になっていたのではないか。
いわば「行き過ぎた悲観論」が、「トランプ暴落」予想となり、その反動が「トランプ・ラリー」になったということではないか。そしてこの経験は、トランプ氏の2度目の米大統領選挙に臨んだ際に活かされたようだ。2024年の米大統領選挙では、8年前とは打って変わり、終始、トランプ候補優勢との見方で推移した。その中では米ドル高、米金利上昇、米国株高を見込んだ「トランプ・トレード」が急拡大した。多くの面で、8年前と正反対の展開となった米大統領選挙だった。
「関税ショック」、「石油ショック」=分岐点攻防に差し掛かった米ドル
2025年から始まったトランプ政権2期目は、日欧の同盟国に対しても高い関税で強硬な交渉を行い、国際法を無視して世界最強の米国軍が武力行使するなど、1期目を上回る過激な行動が続いている。それは2025年4月の「関税ショック」、そして今回のイラン攻撃に端を発した「石油ショック」などにより、金融市場を大きく動揺させながらも、これまでのところ「トランプ暴落」までには至っていない。ただそれはこの先も続くのだろうか。
米ドルの総合力を示す実質実効相場は、2017年1月のトランプ政権1期目の発足後も約1年間下落に向かったが、かろうじて5年MA(移動平均線)にサポートされて、上昇トレンド継続となっていた(図表2参照)。
実は2025年1月のトランプ政権2期目のスタート以降も、米ドル実質実効相場は同じように一本調子で下落し、その後の1年で1期目のケースと同じように5年MA割れを巡る攻防となっている。1期目同様に、米ドルはここで下落が止まるのか、それともいよいよ5年MAを割り込み下落トレンドへの転換が確定することになるのか。米ドルの「トランプ暴落」が起こるかどうかの分岐点局面にあるようにも感じられる。
