4月中旬から3月期決算企業の決算発表が本格化します。決算発表では、2026年3月期(2025年度)の実績が明らかになると同時に、新年度となる2027年3月期(2026年度)の会社側の業績見通しも示されます。足元の株式市場はイラン情勢の不透明感など外部環境に左右されやすい局面にあります。こうした局面では個別企業の決算内容に着目し、業績の着実な推移が期待される銘柄を選別していくことが重要となります。
特に注目したいのが、決算発表における会社側の業績予想のスタンスです。これは企業の先行きに対する見方を示す重要なシグナルであり、銘柄選別において有効な手掛かりとなります。そこで今回は、決算発表に含まれる2つの情報に着目した投資戦略を紹介します。
利益の着地は株価にどう影響するのか
今回、注目する2つの情報とは、「利益の着地」と「会社計画の保守性」です。まず「利益の着地」とは、企業が決算発表直前までに直近で明らかにしている2026年3月期(2025年度)の会社計画に対して、実際の決算で公表された利益が上振れたのか(上方着地)、あるいは下振れたのか(下方着地)を確認するものです。
そのうえで結論から言えば、会社計画を上回る上方着地となった銘柄は、株価の上昇が期待されます。会社計画を上回る着地となった企業は、会社が想定していた水準を上回って業績が好調であったことを意味します。加えて、事前に想定されていた利益水準を上回ることで、株価にもポジティブな反応が生じやすくなります。
決算発表日前後の株価の動きから分かること
イベントスタディを使った検証方法
そこで本稿では、決算発表日前後における株価の動きをイベントスタディという手法を用いて検証しました。イベントスタディとは、特定の出来事(ここでは決算発表日)を基準として、その前後で株価がどのように動いたかを時系列で分析する手法です。具体的には、決算発表日を起点として、その前後の株価リターンを日次ベースで計測し、イベント日を基準(0%)として累積リターンを算出します。さらに、市場全体の影響を除くため、同期間における対象銘柄全体の平均リターンを差し引いた超過リターンを用いて分析しています。
上方着地は短期的な材料にとどまらず、中期的な株価上昇にもつながる傾向
ここでは、昨年となる2025年3月期の決算発表を対象にイベントスタディを実施しました。利益の着地は、企業の本業の収益力を示す営業利益ベースで判定しています。図表1を見ると、上方着地となった銘柄群は、決算発表日直後にその内容を株価が速やかに織り込む傾向が確認できます。一方で、特に注目すべき点は、決算発表から1ヶ月程度(20立合日数)以降も株価の上昇が続いている点です。
注2:分析対象はTOPIX500構成銘柄のうち、3月期決算企業とし、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外した。また、営業利益予想に関してアナリストコンセンサスが取得可能な銘柄に限定している。
注3:本決算発表において、会社計画に対して営業利益が上振れ(上方着地)した銘柄と下振れ(下方着地)した銘柄に分類し、それぞれの株価パフォーマンスをイベントスタディにより分析した。具体的には、各銘柄について決算発表日を基準日(イベント日)とし、その前後の株価リターンを算出し、イベント日を0%として基準化したうえで累積リターン(累和)を求めている。 また、超過リターンは、同期間における対象銘柄に等金額投資した場合の平均リターンをベンチマークとして差し引くことで算出し、その累積値(累和)として表している。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
これは、決算発表直後の短期的な反応にとどまらず、会社の想定を上回る業績が確認されたことによる業績モメンタムが、その後も継続的に評価されていることを示唆しています。すなわち、上方着地は短期的な材料にとどまらず、中期的な株価上昇にもつながる傾向があると考えられます。
下方着地は、中期的な株価下落にもつながる傾向
一方で、下方着地となった銘柄についてもこれと対照的な動きが見られており決算発表後、中期的に株価が下落する傾向が確認されました。
このような傾向は2025年3月期に限ったものではなく、2000年以降の長期データで検証しても、平均的に同様のパターンが確認されています。
会社計画の保守性が株価のその後を決める
そして、2つ目の情報である「会社計画の保守性」も組み合わせることで、より精度の高い銘柄選別が可能となります。
会社計画の保守性については、図表2で具体的に2026年3月期の決算発表を例に挙げて説明します。
まず、先ほど紹介した上方着地は、2026年3月期の決算発表時点において、「2025年度会社計画営業利益」に対して、決算で公表される「2025年度実績営業利益」が上回っているかどうかで判定しています。
一方で、会社計画の保守性は、決算発表時に会社が公表する「2026年度会社計画営業利益」と、「2026年度のアナリストコンセンサス予想」との関係から評価します。
具体的には、会社計画がコンセンサスを下回っている場合、会社が業績見通しを慎重に見積もっている、すなわち保守的な計画であると解釈されます。このように会社計画が保守的である場合、将来的に業績が上振れる余地があると期待されやすく、それに伴って株価の上昇につながる可能性があります。
上方着地×保守計画が生む「 時間差上昇」の投資戦略
ガイダンスリスクの捉え方
上方着地かつ保守的な会社計画を示した銘柄のイベントスタディ結果を示したのが図表3です。本分析は、2025年3月期の決算発表を対象に行っています(図表3青線)。
図表3をみると、決算発表直後には上方着地であるにもかかわらず、株価が下落する傾向が確認されます。これは、会社計画が市場の期待水準を下回ることで失望感が先行する、いわゆる「ガイダンスリスク」と呼ばれる現象によるものです。
ガイダンスリスクとは、企業が示す将来の業績見通し(ガイダンス)が市場の期待を下回った場合に、足元の業績が良好であっても株価が下落する現象を指します。決算発表では実績と同時に今後の見通しが示されるため、このガイダンスの影響が短期的な株価の動きを左右することが少なくありません。
注2:分析対象はTOPIX500構成銘柄のうち、3月期決算企業とし、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外した。また、営業利益予想に関してアナリストコンセンサスが取得可能な銘柄に限定している。
注3:本決算発表において、会社計画に対して営業利益が上振れ(上方着地)した銘柄のうち、会社計画の内容に基づき「保守的会社計画」と「積極的会社計画」に分類し、それぞれの株価パフォーマンスをイベントスタディにより分析した。各銘柄について決算発表日をイベント日(0日)とし、その前後の株価リターンを算出、イベント日を0%として基準化したうえで累積リターン(累和)を求めている。 また、超過リターンは、同一期間における対象銘柄全体に等金額投資した場合の平均リターンをベンチマークとし、各銘柄のリターンからこれを差し引くことで算出し、その累積値として表示している。
中期的な投資の場合のタイミングの考え方
決算発表から20営業日程度が経過した後は、株価の上昇が顕著に見られます。上方着地のみで銘柄を選別した場合と比較しても、上昇モメンタムはより強くなっています。このことから、中期的な投資を前提とする場合には、決算発表直後ではなく、おおむね1ヶ月程度経過したタイミングで投資する戦略が有効と考えられます。
これは、会社計画が保守的であることにより将来の業績上振れ余地が意識される中で、直前期に実際に業績が上方着地していることが、その蓋然性をより強く裏付けるためです。すなわち、「足元の実績」と「将来の控えめな見通し」の組み合わせが、時間の経過とともにポジティブに再評価される構造にあるといえます。
なお、図表3については2025年の結果に加え、2000年以降の各年の3月期決算発表日を対象に同様のイベントスタディを行い、その平均値も確認しています(図表3紫線)。概ね同様のパターンが観察されており、平均的な傾向として捉えることができます。
会社計画、積極的vs保守的どちらがよいのか?
一見すると、会社計画がアナリストコンセンサスを上回るような積極的な企業の方が、成長期待が高く魅力的に見えるかもしれません。しかし実際には、こうした企業はすでに市場の期待が高く織り込まれている場合が多く、決算発表後の株価上昇余地は限定的となりやすい傾向があります。
これに対して、保守的な会社計画を示す企業は、当初は市場の期待を下回ることで株価が弱含む場面も見られますが、その後の業績上振れ余地が意識されるにつれて、株価が見直されやすくなります。特に、直前期に上方着地している場合には、その上振れの蓋然性がより高いと評価されやすく、中期的な株価上昇につながりやすいと考えられます。
したがって、投資戦略としては、4月中旬から本格化する2026年3月期の決算発表において、「上方着地かつ保守的な業績見通し」を示した企業を対象に、決算発表からおおむね1ヶ月程度経過したタイミングで投資する戦略が有効と考えられます。
マネックス証券のウェブサイトで「上方着地かつ保守的な業績見通し」を確認する方法
ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが、決算発表時に「上方着地かつ保守的な業績見通し」を確認する方法を紹介します。
マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」を利用できる方は、図表4の赤丸印の検索欄に銘柄コード、あるいは銘柄名を入力すると、銘柄の基本情報を確認することができます。ここでは一例として6501日立製作所を取り上げています。
次に、青丸印のタブで「アナリスト予想」、さらに紫丸印のタブで「営業利益」を選択すると、利益予想の推移を確認することができます。マウスのカーソルをグラフの直近、茶色丸印付近に合わせることで、「会社予想2026年3月期」の数値を確認することが可能です。
4月からスタートする決算発表においては、この直前時点で確認できる「会社予想2026年3月期」の営業利益と、実際に決算発表で公表される営業利益を比較し、実績が上回っていれば「上方着地」となります。また、「コンセンサス予想2027年3月期」に対して会社側の計画が下回っている場合には、「保守的な会社計画」と判断できます。
皆さんが注目している銘柄について、こうした観点で確認することで、投資タイミングを検討するうえでの参考になります。
