「レートチェック」後に急増した米ドル売り
1月23日、米通貨当局が円安けん制のため、為替介入の前段階とされる「レートチェック」に動く前、1月20日時点のCFTC(米商品先物取引委員会)統計による投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションから試算)は1万枚と小幅ながら買い越しだった。ところが「レートチェック」後は売り越しに転換、2月17日時点で売り越しは21万枚まで拡大した(図表1参照)。
米ドル売り越しの過去最高は、2011年3月に記録した26万枚(図表2参照)だった。要するに、「レートチェック」の後から米ドル売りが急増し、1ヶ月もたたないうちに過去最高に迫るほど売り越し拡大となったわけだ。
円安けん制なのに円以外の通貨に対しても米ドル売りが急拡大
この「レートチェック」は、もちろん米ドル高よりも円安けん制が目的だったのだろう。それではこの米ドル売り増加の中心は、対円だったかといえばそうではなかった。1月20日時点で米ドルに対する円のポジションは4万枚の売り越しだったが、2月17日時点では1万枚の買い越しに転換した(図表3参照)。売り越しから買い越しへ転換した結果、円の買い越しは5万枚程度増えた計算になる。ただ、それ以上に米ドルに対して買い越しが増えた通貨があった。
ユーロは1月20日時点で11万枚の買い越しだったが、2月10日時点では18万枚まで買い越し拡大となった(図表4参照)。つまり米当局の「レートチェック」を前後して、米ドルに対するユーロ買い越しは7万枚拡大した。
豪ドルは、「レートチェック」前の1月20日時点では、米ドルに対して1万枚と小幅ながら売り越しだったが、「レートチェック」後は買い越しに転換し、約1ヶ月で買い越しは5万枚まで拡大した(図表5参照)。さらに米国等によるイラン攻撃を受けて多くの通貨に対して米ドル買いが増えた中でも、豪ドルは例外的に対米ドルでの買い越し拡大が続き、3月24日時点では7万枚まで買い越しが拡大した。
「米ドル離れ」で悩ましい米ドル売り介入判断
以上のように見ると、米当局は米ドル高をけん制したわけではなく、あくまで円安けん制を目的とした「レートチェック」だったと考えられる。しかし、円に対する以上に、ユーロや豪ドルに対する米ドル売りが急増するところとなっていた。この背景には、トランプ米大統領の国際秩序を無視した言動などによって、米国への不信感の拡大したことによる「米ドル離れ」の影響があったのではないか。
2月末に始まったイラン攻撃は、米ドル「売られ過ぎ」修正のきっかけとなった。米ドル売り越しは、2月17日時点の21万枚をピークに縮小に転じ、足下では4万枚の買い越しに転換した。ホルムズ海峡封鎖などによるエネルギー供給不安は、「世界一の産油国」米国の通貨、米ドルを選好する要因となった。
それは、1月23日の「レートチェック」当時より米ドル下落リスクが低下したとして、米当局がこの先、実際の米ドル売り介入に動く決定を下す理由になるだろうか。それにしても、「レートチェック」後の米ドル売り急増を考えると、実際の米ドル売り介入の判断は悩ましいものになりそうだ。
