2024年からNISA制度が恒久化され、非課税投資枠は大幅に拡充されました。これを受けて、「NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)、どちらを優先したらよいですか?」という質問を受ける機会が増えました。「まずはNISAから」という人も増えていますが、どう考えたらいいのでしょうか。判断のポイントを整理します。

NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)の違い

下図にNISAとiDeCoの違いをまとめました。

【図表1】NISAとiDeCoの違い
出所:筆者作成

余裕があれば両方活用したいところですが、「まずはどちらかひとつを」という場合はどうしたらよいでしょうか。

・長期的に資産形成をしていきたい
・運用できる期間がそれなりにある(少なくとも10年以上、できれば15年以上あった方がベター)

このような場合は、少額から始められ、引き出しの縛りがないNISAから始めたほうがベターです。一方で、あわせてiDeCoにも加入しておいたほうがよいと思われるケースもあります。

iDeCoは属性や年収などによって優先度が異なる

そこで、タイプごとにiDeCoの税制的なメリットと留意点をまとめました。どのタイプも、「運用している間の運用益が非課税になる」というメリットは等しく享受できますが、拠出時、給付時に恩恵があるかどうかはタイプや収入、加入期間などによって異なります。

(1)国民年金の第1号被保険者(自営業・フリーランス等)は、積極的に活用を

自営業やフリーランスとして仕事をしている人は、iDeCoを積極的に活用したいものです。自営業やフリーランスの方は、厚生年金に加入している会社員や公務員と違い、将来受け取れる公的年金は国民年金(老齢基礎年金)だけになります。会社勤めをしていた人もいると思いますが、厚生年金の加入期間が短いと、必然的に国から受け取る公的年金の金額は少なくなります。

例えば、40年にわたり国民年金保険料を支払った場合、受け取れる基礎年金は月額7万円程度です(令和8年度の場合)。できるだけ早いうちからiDeCoなどを活用して資産形成に励むことをおすすめします。

ただ、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、売上に波があるフリーランス・自営業の場合、不安を持つ方も多いようです(個人事業主の期間が長い私もそうでしたから、気持ちはわかります)。前提として、万一に備えるお金は厚めに持っておくこと。会社員は生活費の半年分くらいが目安と言われますが、個人事業主の場合はそれより多めに準備しておく必要があります。

そして、iDeCoだけでなく、小規模企業共済も合わせて利用するという選択肢もあります。小規模企業共済は、支払った掛け金の一定割合まで借り入れも可能です。IDeCoと小規模企業共済の受け取り方には留意点もありますが、詳しくは別の機会に説明したいと思います。

(2)勤務先に企業年金がない会社員も活用すべき

中小・ベンチャー企業はもとより、最近は上場企業でも企業年金がないという会社もあります。退職金がない・少ない、企業年金がないという会社員にとってiDeCoは老後資金を作る手段となるはずです。できれば、NISAと併せてiDeCoに加入し、少額でもよいので積み立てをスタートしましょう。

(3)企業型DC加入者はマッチング拠出の活用を、2026年4月からマッチング拠出の上限撤廃

企業型DC(企業型確定拠出年金)加入者でマッチング拠出(会社の掛金に個人が掛金を上乗せできるしくみ)ができる人は、まずはそちらを優先的に活用しましょう。

企業型DCの加入者がマッチング拠出をした分は、iDeCoと同様、拠出時の掛金全額が所得控除されて課税所得が下がる効果があります。また、iDeCoに加入すると運営管理機関などに毎月支払う口座管理手数料は個人の負担ですが、企業型DCでは会社負担となります。口座も一元化されるので管理もラクです。

2026年4月からマッチング拠出の上限撤廃

制度上2026年4月から事業主掛金を引いた分がすべて使えるように

2026年4月から「企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えることができない」とする要件が廃止されます。そのため、月額5万5000円(2026年12月からは6万2000円に引き上げ)から事業主掛金を差し引いた分をすべて使えるようになります(*)。

従来は、例えば会社が出す掛金が1万円なら、1万円までしか上乗せして掛金を出すことはできませんでした。それが、2026年4月からは5万5000円から1万円を差し引いた4万5000円(2026年12月からは5万2000円)までマッチング拠出ができるようになるわけです(*)。これは大きいですね。
*確定給付企業年金(DB)にも加入している人はDBの他制度掛金相当額も差し引く

勤務先によって変更受付時期は異なる

ただし、制度上は2026年4月からマッチング拠出の上限が撤廃されますが、すべての会社で4月から増額できるとは限りません。マッチング拠出の金額変更は原則年1回です(今回の制度改正に伴う増額は1回に含まない)。会社によっては金額変更の受付時期が4月ではなく、別の月になっているケースもあります。また、大手企業の中にはシステム改修のために変更受付に時間を要するケースもあります。勤務先に確認してみましょう。

また、以前のコラム「企業型DC加入者は60歳以降にiDeCoに移換する選択肢も」でも触れましたが、60歳以降にiDeCoに移換する選択肢もあります。

企業型DCはあるが、マッチング拠出はないという場合のiDeCoの活用は、退職一時金の金額やほかに企業年金があるかどうかによって変わります。次の④を参考にしてください。

(4)大企業の社員(確定給付型年金あり)や公務員は拠出時メリット大だが、受け取り時は注意

拠出時は課税所得・掛金額が多いほど税の軽減効果が高まる

iDeCoの拠出時に掛金を全額「所得控除」できるという税の軽減メリットは、課税所得が高いほど有利となります。そのため、比較的高収入の方も含まれる確定給付型企業年金(以下、DB)のある大企業の社員や、公務員は税の軽減メリットを享受することができるでしょう。

例えば、DBのある会社員で年間24万円の掛け金を払ったとします。仮に所得税率20%(課税所得が330万円超694万9000円以下)の場合、所得税と住民税と合わせると、1年で約7万2000円の税の軽減効果があります。これが10年、20年と続くと大きな金額になります。

複数の退職所得がある場合には受け取る順番や時期なども検討する必要

一方、給付時は注意が必要です。iDeCoは課税を繰り延べる制度なので、給付時は原則として課税されます。一時金で受け取ると退職所得控除、年金で受け取ると公的年金等控除は活用できますが、退職一時金や一時金で受け取る企業年金の額が大きいと退職所得控除の枠をほとんど使いきってしまい、それを超える分について税負担が生じるケースもあります(ただ、退職所得控除の枠を超えても、課税されるのは2分の1の金額、分離課税になる点はメリットです)。

複数の退職所得がある場合には受け取る順番や時期なども検討する必要があるでしょう。そのためにはiDeCoだけでなく、公的年金や勤務先の退職給付制度の理解が不可欠です。2026年から退職金税制も一部変わりますし、今後も見直しがあるかもしれません。

「受け取り方についてあまり悩みたくない」という方は、まずはNISAを優先的に使う、ということでよいのではないでしょうか。退職所得の受け取り方については別の機会に解説したいと思います。

(5)専業主婦・主夫は拠出時のメリットはないが、給付時はメリットあり

国民年金の第3号被保険者は拠出段階での税制メリットはありません。一方、運用中の利益は非課税であり、「自分名義の退職金」ができる意義はあります。また、働いていない場合でも、加入期間に応じて、一時金で受け取るときには「退職所得控除額」を差し引くことができます。そのため、受け取り時にほとんど非課税で受け取れる可能性があります。

ただ、加入中は毎月口座管理手数料がかかります。掛金が少なく、定期預金などの元本確保型を選択すると、コスト負けしてしまう可能性もあります。まずはNISAの活用を検討しましょう。