株式市場は腰の強い相場が続いています。急ピッチの上昇に対する高値警戒感はあるものの、適度な速度調整が入りながらの上昇相場といった状況が続いています。

先週にはザラ場ベースで33年ぶりとなる高値を日経平均は記録しました。これまでは「失われた何十年」という表現で停滞が語られてきましたが、そういった長期低迷フェーズからは着実にシフトチェンジが進んできたように感じています。

ネガティブな材料はもちろん事欠きませんが、そもそもネガティブな材料がなくなった状態はピークでもあるのです。楽観は禁物ですが、現在はまだ上昇過程が継続しているとの見方を継続したいと思います。

「核融合発電」実用化に向け取り組むベンチャー企業が続々出現

さて、今回は「核融合発電」をテーマに採り上げてみましょう。実はこの技術、私は個人的にかなり期待しています。というのは、様々なエネルギー問題の緩和・解消と脱炭素アプローチを同時に実現するゲームチェンジャーとなるポテンシャルを秘めていると思うからです。

この技術は随分前から既に明らかになってはいたのですが、実用化には20~30年単位の時間が必要とされていました。株式投資という観点でも、実用化の目途が立たないことから、現時点では「1つのお話」の水準を出るものではなかったのです。

しかし、より簡単で核融合プロセスを試みるベンチャー企業が続々出現し始め、早ければ2024年にも核融合発電を始めようという計画を明らかにした企業も現れました。俄かに「お話」が現実味を帯びてきたと言えるでしょう。

もちろん、現時点においてシナリオ通りに順調にコトが進むとは限らず、まだまだ解決すべき課題が出てくるというのが現実ではないかと想像します。それでも実用化に向けての時間軸は大幅に圧縮されることになるのではないでしょうか。私の期待通り、本当にゲームチェンジャーになるのでれば、それに伴って株式市場においても息の長いテーマになっていくのではないかと想像します。

日本政府の後押しする核融合発電とは

その核融合発電とは一体どんな技術なのでしょうか。原子力発電とは違うのでしょうか。簡単に言えば、原子力発電はウランなどの重元素を分裂させた際に放出される中性子で発電するのに対し、核融合発電は重水素といった軽元素を融合させた際に放出される中性子で発電するというものです。

重要な点は、原子力発電では一定の核分裂が終了すれば核廃棄物が残ってしまうのですが、核融合発電では人体に無害で安定の高いヘリウム元素が生成されるにとどまるということです。

また、原子力発電の原料となるウランは資源として有限であり、取り扱いも非常に難しいものですが、核融合発電に用いられる重水素は自然界にふんだんに存在しているということも大きな違いです。

そしてなんといっても、融合には一定の条件設定が不可欠なため、コントロールに支障があれば勝手に反応は止まります。これに対し、分裂は自然に起こってしまうために反応が暴走し、その結果、核爆発をも招きかねません。この技術の持つ可能性が如何に大きいかがわかっていただけるかと思います。

そう言った折、日本政府も「核融合産業協議会(仮)」の設立方針を固め、産学連携での核融合開発を推進する意向を示しています。その前段階として、任意団体「核融合市場研究会」が設立されました。新たな技術革新などが生まれてくることでしょうが、こういった試みが早く現実のものになることを期待して止みません。

核融合発電に関連した注目銘柄

このような大きなテーマは、おそらく遠くない未来に株式市場でも注目が始まることでしょう。関連銘柄としては、例えば核融合市場研究会に参画したトーエネック(1946)、東洋炭素(5310)、イビデン(4062)、日本酸素ホールディングス(4091)、東光高岳(6617)、日本碍子(5333)、日立製作所(6501)、富士電機(6504)、愛知電機(6623)、三菱重工業(7011)、中部電力(9502)、関西電力(9503)、四国電力(9507)などの企業群が挙げられるかもしれません。

また、現時点で研究会には参画していないものの、古河電機工業(5801)、フジクラ(5803)、住友商事(8053)といった企業は米英の核融合炉開発企業への部材納入や出資でも実績を残しています。

もちろん、これから「お話」が「リアル」に変わっていく中で、関連銘柄群もどんどん増えていくことになるのでしょう。これからは核融合発電に関するニュースには一旦目を止めて、どういった企業がアクションを起こしているかなど、チェックを是非続けてみて下さい。そうやってゲームチェンジャーを見つけ出すことができれば、株式投資冥利に尽きることになるでしょう。