米国株一巡局面で行なわれた日銀利上げ

日銀は2024年以降、2024年3月19日、同7月31日、そして2025年1月24日と3回の利上げを行った。ただ、この利上げの後から、日経平均は短期間で1~2割の下落に向かった(図表1参照)。つまり、この間の日銀利上げは結果として株安への転換や株安加速をもたらすことが続いた。それはなぜだろうか。

【図表1】日経平均と日銀利上げの関係(2024年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

同じようなことが、過去3回の日銀利上げと米ナスダック総合指数との関係でも確認できる。日銀利上げは、結果としてナスダック総合指数の下落への転換や下落加速のきっかけのようになっていた(図表2参照)。

【図表2】ナスダック総合指数と日銀利上げの関係(2024年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

普通に考えれば、日銀の利上げの米国株への影響は限られるだろう。また同様に、日本株と米国株との関係も、基本的には「米国株→日本株」と、日本株が米国株の影響を受けることが多いと考えられる。

以上を踏まえると、図表2は米国株が下落に転換する、または下落が加速するタイミングで日銀が利上げを行い、米国株の動きに連れる形で図表1のように日本株も下落への転換、そして下落加速が起こったと考えるべきものなのではないか。そうであれば、なぜ日銀は米国株高に一巡感があり、株安への転換や加速が起こりそうな局面で、それを後押ししかねない利上げを繰り返したのか。

政治圧力で後手に回る日銀判断=景気・物価へ逆効果の懸念

これはある程度想像できることだが、日銀の金融政策判断は、今回の高市政権誕生後がより顕著だが、政治からの圧力を強く受けるようだ。そして、高市政権以前も、脱デフレという政治目標の圧力が続いた結果、本来的に先手が期待される金融政策判断において、利上げ判断は後手に回りがちだった懸念があった。その結果、株高や景気回復の転換局面で利上げを行い、株安への転換や加速を後押しすることになってしまったということではないか。

その典型が、2024年7月31日の利上げだろう。これはその後の世界的な株価暴落、「令和のブラックマンデー」のきっかけになったとされたものだが、それは市場に心の準備がない中での「サプライズ利上げ」のショックが大きかったとの解説が多いようだ。ただ、本当にそうだろうか。すでにこの利上げ前に日米の株価は大きく下落していた。にもかかわらず、限られた利上げチャンスに固執し、日銀がそれを実行したことが、株安を加速させたということだったのではないか。

政治に翻弄される日銀=「遅すぎた利上げ」の悪影響とは?

2010年頃まで、日本には「円高恐怖症」があった。円高は基本的に景気回復の金利上昇局面で起こるが、それに対する日銀利上げはさらなる円高をもたらしかねないという抵抗が強まった。その結果、日銀利上げは、円高リスクが低下する景気の悪化、金利低下局面で行なうことになったため、それは物価や景気との関係でいえば明らかに後手に回るものだった。

今の日本に「円高恐怖症」はない。ただし脱デフレという政治目標が続いた中で、それを声高に主張した高市政権の誕生で日銀の利上げ判断は後手に回った懸念がある。そして後手に回った利上げを行ったともいえる2024年以降のケースでは、株安が拡大したが、果たして今回はどうか。なお為替への影響は、2024年3月の利上げでは円安に、その他、2024年7月と2025年1月の利上げは円高と分かれた結果となっている。