片山財務相は150円超「望ましくない円安」との判断か
新財務相に片山さつき氏が決まった後、為替マーケットがまず注目したのが、3月のあるインタビューでの発言だった。「米ドル/円の実力は120円台という見方が多い」、「物価高を落ち着かせるためには円高が望ましい」(2025年3月26日)。
片山氏はその約1年前、2024年4月にも為替相場に関する発言を行っていた。「過度な円安は消費を圧迫する要因であり、消費下支え策を検討すべきだ」(2024年4月23日)。
2025年3月26日の発言前日の米ドル/円終値は149.9円。そして2024年4月23日の前日終値は154円だった。これらを参考にすると、高市政権発足後の150円を超えた米ドル高・円安の動きは、財務相として通貨政策の責任者に就任した片山氏の目には、「消費を圧迫する過度な円安、望ましくない円安」と映っている可能性が高いのではないか。
追加利上げ、介入強化には慎重=片山新財務相
ただし、そうした「行き過ぎた円安」にどう対応するかと言えば、「為替はファンダメンタルズを反映すべきで操作は不適切」(2025年3月26日)との発言から推測されるところでは、少なくとも2022、2024年に断続的に行われた円買い介入を、より積極化する感じはない。
また、上述の2024年4月の発言では、「追加利上げは慎重に判断するべき」との見解を示していた。以上からすると、「行き過ぎた円安」への対応は、為替介入や利上げではなく、あくまで円安とそれに伴う物価高で悪影響を受けた「消費の下支え」というのが基本的な考え方のようだ。
150円超の円安に不満なトランプ大統領=関税再引き上げも?
片山氏が「過度な円安は消費を圧迫する」として懸念を表明した2024年4月23日、まだ米大統領に返り咲く前のトランプ氏も、以下のような有名な円安批判の発言を行った。「米国の製造業にとって大惨事だ」。
関税政策や外交政策では発言が二転三転するトランプ米大統領だが、「米国の製造業に対して大幅な米ドル高は不利であり、米ドル安の方が儲かる」という為替相場に対する評価は一貫している。大統領に返り咲いた後、3月3日には以下のような発言を行っていた。「日本であれ中国であれ、米ドルに対する通貨安で私たちは極めて不利な立場に置かれる」(前日、3月2日の終値は150.5円)。
トランプ大統領のこれまでの発言からすると、高市政権発足後150円を超えた米ドル高・円安が続く動きに不満を抱いている可能性はあるだろう。そのトランプ米大統領は4月に8つの「非関税障壁」をSNSに投稿したが、その最初が「Currency Manipulation(為替操作)」だった。以上からすると、このまま150円を超える米ドル高・円安が続いた場合は、「非関税障壁」の過度な円安を理由に、関税再引き上げを言い出す可能性もあるのではないか。
過度の円安への不満では一致=対日圧力拡大ならどう対応?
以上、片山新財務相とトランプ米大統領のこれまでの為替相場に対するおもな発言を見てきたが、立場は違うものの、150円を超えた米ドル高・円安への不満ということでは基本的に近いと言ってよいのではないか。もし仮に、トランプ政権による日本に対する関税再引き上げとなった場合、追加利上げや為替介入についての片山新財務相の方針に変化が出てくるかは注目してみたい。
