モトリーフール米国本社 – 2025年10月20日 投稿記事より

AI投資が拡大する中、主要チップメーカーが覇権を競う

ここ数週間、人工知能(AI)関連企業間の契約締結が相次いでいます。きっかけとなったのは、8月に行われたエヌビディア[NVDA]のジェンセン・フアン氏の決算報告での発言でした。この時、フアン氏はAIインフラへの支出が2030年までに最大4兆ドルに達すると予測していました。

この発言は、計算能力への需要が非常に強いことを示しており、今後数四半期から数年にかけて、AI向け半導体の受注が爆発的に増える可能性を示唆しています。これにより、エヌビディアをはじめ、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ [AMD](以下、AMD)やブロードコム[AVGO]などの競合するチップ設計企業が恩恵を受けるとみられます。そして実際この動きは始まっており、各社が今日の最大手AI企業であるOpenAIと契約を締結しています。

人気チャットボット「ChatGPT」を開発したAI研究機関であるOpenAIは、プラットフォームを稼働させるために膨大な計算能力を必要としており、将来を見据えて最近、こうしたトップ半導体メーカー数社と契約を締結しました。内容を確認し、どのチップ設計会社が勝者となるのか見ていきましょう。

自社製チップの需要が急増しているエヌビディアと競合社2社

まず、これらのチップ競合企業について簡単にご説明します。エヌビディアは画像処理装置(GPU)をいち早く市場に投入し、非常に高性能のAIチップで市場をリードしています。

AMDは後発ながら、エヌビディアに対抗すべく技術革新を続け、現在では市場リーダーのエヌビディアの製品に匹敵すると評価するアナリストもいます。

最後に、ブロードコムはネットワーキングのエキスパートとして知られており、それに加え、「XPU」と呼ばれるチップを設計しています。これらはカスタムアクセラレータと呼ばれるもので、特定のタスクに最適化された性能を発揮するよう設計されています。一方、エヌビディアとAMDのチップは汎用性が高く、幅広いAI分野で幅広く活用できる点が特徴です。

3社とも自社製チップの需要が急増しており、直近数四半期においてAI関連の売上高が2桁の伸びを記録しています。

エヌビディア[NVDA]

それでは、OpenAIとの提携内容について、エヌビディアからみていきましょう。2025年9月、エヌビディアはOpenAIに対して最大1,000億ドルを投資すると発表しました。これは、研究機関であるOpenAIが今後数年間で10ギガワット相当のエヌビディアのシステムを構築する計画に基づくものです。

これらの導入は、エヌビディアが開発中の「ヴェラ・ルービン」システムを基盤として、2026年後半に開始される予定です。エヌビディアは、この導入プロジェクトの進行に合わせて、段階的にOpenAIへ投資を行っていく計画です。参考までに、米国エネルギー省によれば、1ギガワットは294基の実用規模風力タービンに相当するとのことです。

アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]

2025年10月初め、AMDとOpenAIが契約を締結しました。OpenAIは今後数年間にわたって6ギガワット相当のAMDチップを導入する予定で、この導入も、エヌビディアとの契約と同様に、2026年後半に開始される見込みです。

計画の一環として、AMDはOpenAIに対して最大1億6,000万株(AMDの発行済株式の10%に相当)の新株予約権(ワラント)を発行しました。これらの株式は特定の成果目標の達成に応じて付与されます。したがって、この契約の進展次第では、OpenAIが最終的にAMDの10%を保有する可能性もあります。

ブロードコム[AVGO]

最近では、OpenAIがブロードコムのチップおよびネットワークソリューションを搭載したシステムを共同開発すると発表しました。これは10ギガワット相当のブロードコムのXPUに対する契約であり、前述の他の契約と同様に、2026年後半から展開が開始される予定です。この契約の金額的な条件については公表されていません。

誰が勝者となるのか

さて、本題に戻りましょう。どのチップ設計企業が最大の勝者となるのでしょうか。OpenAIのプロジェクトを支える機会を得たことは、これら全ての企業にとって朗報ですが、筆者はエヌビディアが最も有利な契約を獲得したと考えます。その理由は以下の通りです。

エヌビディアはOpenAIへの投資を約束したことで、自社GPUの導入を確実なものにしました。同社が段階的にOpenAIへ投資を行うことで、OpenAIはインフラの拡張に必要な資金を確保することが可能となります。

つまり、これはエヌビディアにとって極めて戦略的な投資であり、自社のGPUが次世代AI発展の中心的存在となることを保証するものなのです。さらに、現在エヌビディアは560億ドル以上の現金を保有しており、今後も数十億ドル規模の長期的投資を行う十分な財務的余力があります。これらの要素により、エヌビディアは今後も売上成長を続け、このエキサイティングなAIの成長期において株価上昇を後押しする可能性が高いと考えられます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adria Ciminoは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、アドバンスト・マイクロ・デバイセズおよびエヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はブロードコムを推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。