『国宝』『鬼滅の刃』…2025年夏は映画の話題で持ち切り

9月もお彼岸、空が高くなって急に秋めいてきました。暑かった2025年の夏もようやく過ぎてゆく気配です。この夏は例年になく映画の話題が多かったように思います。とにかく猛烈に暑いので、クーラーの効いている映画館に足を運ぶ人も多かったのかもしれませんが、それ以上に話題の作品が数多く公開されたことも大きかったように思います。

実写映画では何と言っても『国宝』です。歌舞伎の重厚な世界を舞台に、吉沢亮演じる喜久雄と横浜流星が演じる俊介を軸に、二人の若い人気役者の挫折と成功、芸術と葛藤、友情と家族愛を描いて、幅広い層から支持を集めています。実写映画としては22年ぶりに国内の興行収入が100億円を超える大ヒットとなりました。現在もロングラン上映中です。

『国宝』はそもそも吉田修一の原作が素晴らしい出来栄えで、そこに加えて役者たちの技量や努力が驚くべきレベルで、歌舞伎座の舞台裏もかいま見ることができて、3時間近い長い上映時間が少しも長く感じません。二度三度と鑑賞するリピーターも多いそうです。

アニメ映画『鬼滅の刃』もたいへんな人気を集めています。米国では公開最初の週の興行収入が7000万ドル(103億円、推定)を記録しました。1999年の『ポケットモンスター』を抜いて、日本のアニメ映画として歴代トップに躍り出ています。前作は473億円という日本映画の興行収入記録を持っていますが、その記録に迫る勢いです。日本国内でも人気を集めており、この夏は『名探偵コナン』、『ドラえもん』とともにアニメのヒット作がずらりと並んでいます。

コロナ後は邦画人気がより顕著に、動画配信サービス拡大も後押しする映画産業の回復

日本の映画産業は2020年にコロナ禍の影響を受けて大きく落ち込んだものの、その後はコロナ前の水準に回復し、年2000億円前後のレベルで横ばいとなっています。動画配信サービスの市場が拡大していることも背景にあります。

映画市場での最近の特徴は、邦画の人気が洋画を上回るようになっています。2000年代前半は洋画が圧倒的に優位に立っていましたが、2010年ごろに興行収入ベースで邦画が洋画を逆転し、それがコロナ後はより一層顕著となりました。2024年の邦画の国内興行収入は1558億円(前年比+5%)となりました(日本映画製作者連盟)。

国際映画祭で日本人監督、日本人俳優が評価される機会が増えたこと、漫画や小説をベースとしたアニメや実写映画が人気を博していること、動画配信サービスの普及とは裏腹にシネマコンプレックスが増えて、映画館の大きなスクリーンで観る没入体験が受けていること、などが背景にあると見られます。

読書の秋、芸術の秋。この秋は映画館の大きな画面でじっくりと映像作品の世界にひたってみましょうか。

IP活用、ヒット映画連発…改めて注目したいエンタメ銘柄4選

バンダイナムコホールディングス(7832)

おもちゃ、ゲームのバンダイとゲーム大手のナムコが2005年に経営統合。キラーコンテンツは何と言っても『機動戦士ガンダム』シリーズ。1977年に発売したガンダムシリーズのプラモデル(通称「ガンプラ」)の累計出荷数は7.8億個を超える。『ドラゴンボール』、『たまごっち』など世界的な大ヒットIPを複数有する。2025年7月にはソニーグループが同社株式の2.5%を取得。IPを活用したコンテンツ事業を強化する。

【図表1】バンダイナムコホールディングス(7832):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年9月25日時点)

東宝(9602)

日本最大規模のシネコン「TOHOシネマズ」を運営。7月公開の『鬼滅の刃』は興行収入が300億円を超え、国内で上映された映画の歴代第2位まで急上昇(第1位も『鬼滅の刃』2020年)。9月公開の『チェンソーマン』も話題を集める。1-8月の映画の国内興行収入が1129億円に達し過去最高を更新。『国宝』、『名探偵コナン』、『ドラえもん』の効果は絶大。2026年からはワーナー・ブラザースの洋画も配給する予定で話題は尽きない。

【図表2】東宝(9602):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年9月25日時点)

東映(9605)

太秦と大泉撮影所を持つ「最も映画会社らしい会社」。4-6月期の決算は純利益が前年比▲5%の38億円にとどまった。2024年公開で好調だった『帰ってきた あぶない刑事』の反動が出た格好。それでも『ドラゴンボール』、『プリキュア』、『仮面ライダー』というキラーコンテンツを持ち、2023年3月期は『ワンピース』、『スラムダンク』で過去最高の年間興行収入を稼ぎ出した。4400本以上の劇場作品のIP収益化を強化していく方針。

【図表3】東映(9605):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年9月25日時点)

サイバーエージェント(4751)

ネット広告会社から次第に軸足をゲーム、メディア、コンテンツ事業に移行。メディアではネットTV「アベマ」に経営の力点を集中。スマホゲームでは『ウマ娘プリティーダービー』がヒット。海外で『ウマ娘』のアニメ配信が好評で、アニメからゲームに誘導する手法が軌道に乗りつつある。今後も評価の高いオリジナル作品が生み出せれば、新たなIP企業として位置づけられる可能性も。

【図表4】サイバーエージェント(4751):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年9月25日時点)