日経平均が最高値を更新する3つの理由

東京株式市場では日経平均株価が過去最高値を更新する動きとなっている。要因は大きく分けると3つほどある。まず、米国での利下げ観測の浮上やAI(人工知能)半導体・データセンター関連株物色、2つ目が米トランプ政権による関税が日本経済や企業業績への影響が限定的との見方の浮上。そして、3つ目は次期自民党総裁が拡張的な財政政策を取るのではないかとの観測が浮上していることだ。

石破首相は参議院議員選挙で消費税減税に否定的な見方を示し、国民一人当たり2万円の給付金実施を公約に掲げた。結果は参院選で惨敗。給付金の支給のめどすら立っていない。この点から次期総裁は、拡張的になるとの見方につながっている。ただ、少数与党とはいえ、比較第1党の自民党トップが次期首相になることが前提だ。

自民党総裁選、有力候補は高市氏、小泉氏か

自民党の総裁選は9月22日公示、10月3日が党員投票の締め切りで、翌10月4日に議員投開票、党員票の開票が行われる。全国100万人いる党員の意見も聞く、いわゆる「フルスペック」型で実施される。9月13日本稿執筆時点で立候補の意思を示しているのは小泉進次郎農業水産相、高市早苗前経済安全相、小林鷹之元経済安全保障相、茂木敏光前幹事長、林芳正官房長官の5名だ。

このうち、有力候補は前回2024年9月27日に実施された総裁選で1回目投票首位(決選投票で第2位の石破現首相に敗退)の高市氏、3位の小泉氏だ。特に株式市場では前回第1回投票で第1位に高市氏になったことが伝わると株価が急伸。これを「高市トレード」呼び、市場の期待感が高まった経緯がある。

高市氏は積極財政派、政策では原子力発電、核融合、量子コンピューター関連銘柄が有力か

 

高市氏は安倍晋三元首相と近く、保守派からの支持が厚いとされる。前回総裁選では「戦略的な財政出動」を唱えるなど積極財政派だ。消費税減税には否定的ながら、食品について消費税ゼロ%が持論とも伝えられている。また、早期の利上げについても否定的とされる。政策では原発や各融合発電、宇宙ビジネス、量子コンピュータの推進などに前向きとされている。

テーマ 銘柄名称 銘柄コード 主要事業
原子力発電 三菱重工業 (7011) 原発プラントの開発、製造、運転、保守まで一貫サービスを供給
  日本製鋼所 (5631) 原子力発電向け鋳鍛鋼の世界大手
核融合発電 ジェイテックコーポレーション (3446) X線集光ミラー技術はレーザー核融合の開発に不可欠とされる。
  助川電気工業 (7711) 核融合ベンチャーに、核融合反応からエネルギーを取り出す重要部品「液体金属ブランケット」試験装置を納入。
量子コンピュータ フィックスターズ (3687) 最適化問題を解決する量子コンピュータのアルゴリズム開発
  エヌエフホールディングス (6864) 量子デバイスの研究を後押しする信号処理システム開発

小泉氏:財政規律派、政策では「ライドシェア」解禁や子育て支援に積極的か

 

小泉氏は前回の総裁選で「財政にこだわり、成長を止めてはならない」と訴えているが、自民党内では財政規律派との見方も指摘されている。参院選前には消費税減税は時間がかかるなどと発言し、5月には低所得者への現金給付に言及したという。政策では、自家用車を運転する一般ドライバーと乗客をマッチングする配車サービスの「ライドシェア」解禁や子育て支援に積極的とみられる。また、現農水相で、コメの増産に舵を切った。この点ではスマート農業に前向きに取り組む可能性が指摘されている。野党では日本維新の会に近いとみられる。前回の総裁選では得票率で10%を超えたのは石破氏を含め3名だった。

テーマ 銘柄名称 銘柄コード 主要事業
地元百貨店 さいか屋 (8254) 小泉氏地盤の横須賀市などが主戦場の百貨店
ライドシェア ディー・エヌ・エー (2432) タクシーアプリ運営会社に出資
  大和自動車交通 (9082) 2024年4月からライドシェア運用開始
子育て支援 JPホールディングス (2749) 認可保育園運営など子育て支援最大手
  グローバルキッズCOMPANY (6189) 保育所運営を通じ、次世代を担う子どもを育成

このほか、若手・中堅議員を中心に支持を集めている小林氏は消費税減税について協議する必要があるとする一方で、一律給付には否定的な見方を示している。

旧岸田派メンバーと会合を重ねる林氏は防衛相、農水相、外務相などを歴任している。

茂木氏は総裁選への立候補をいち早く表明。新たな連立の枠組みを追求することを明らかにしている。異次元の金融緩和を段階的に正常化していく方向性を示したが、判断は日銀に委ねるとも発言している。連立では国民民主党、日本維新の会を念頭に置く。

金融緩和に前向きな高市氏なら株高継続か、外交力そして野党との連携が重視される

株式市場にとって次期総裁(首相)として期待されるのは高市氏で、次が小泉氏という流れだと考えられる。仮に他の3氏から選ばれる場合、政策などを見極める動きなりそうだ。世界的な防衛力強化の流れもあり、いずれの候補でも防衛予算などは現行の強化路線に変化はないとみられる。金融緩和に前向きな高市氏なら株高継続、慎重な候補の当選なら短期的に調整に入る可能性もある。

一方、誰が当選しても、対米など外交力も問われそうだ。また、少数与党であることから、野党との連携を模索する必要がある。選挙では前回の総裁選で石破氏に投票した票の行方も注目ポイントとなる。

なお、共同通信社の世論調査(9月11日・12日の全国緊急電話で実施)では、次の総裁にふさわしい人は、高市氏が28.0%で首位、小泉氏22.5%、林氏11.4%、茂木氏6.1%、小林氏3.6%となっている。